第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
伝統の「W」は復調するか?
早稲田大学の最強ルーキーが照らす未来とは。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byShunsuke Mizukami
posted2018/11/30 13:10
全日本大学駅伝では7人抜きの快走。チームを一時、シード圏内にまで引き上げた。
高校時代はまさに無敵。
高校時代の中谷はまさに無敵と言われる強さを誇った。留学生ランナー相手に後塵を拝すことはあったが、日本人選手相手に負けたのは高校2年の都道府県駅伝が最後。それも相手は1学年上の選手だった。高校3年で出した5000m13分47秒22の自己記録は高校歴代5位に相当する好タイムだ。
高校の先輩である大迫や竹澤健介(5000mの日本人学生記録保持者)の背中を追うように、2018年4月に早稲田大学に進学した。2つの駅伝の成績を見ると順調な時を過ごしてきたように思えるが、すでに挫折も経験したという。
「関東インカレ(5000mに出場して25位)くらいからですね。調子を崩して、自分でも苦しくなって、高校の恩師である高見澤(勝)先生に相談したこともあります。その時に先生が『高校時代にずっと良い形で来られたから、いつかこんな日が来るとオレも思っていた』と言ってくださって。それでちょっと安心したというか。
『今はしんどいかもしれないけど、あまり悲観的にならずむしろ足元を見つめ直す良い機会だと思ってやってごらん。今はガマンだよ』って。僕もそうだと思ったし、それからは高校時代の練習を取り入れたり、ひとりで練習をやらせてもらったりして、徐々に調子が上がってきました」
練習メニューを自ら組み立てる。
知野亨トレーナーの意見も参考にしながら、自らも練習メニューを組み立てる。朝練は集団から離れてひとり、黙々とクロカンコースをジョグすることに決めた。朝練の最後に400mを60秒で走るスピード練習を取り入れたことで、全体の切れが戻ってきたという。選手の自主性を尊重する相楽豊監督の度量もさることながら、これだけのことを決断実行できる1年生はそういないだろう。
今季、早稲田大学は駅伝で結果を残せずにいる。出雲は10位、全日本は15位と、OBならずとも心配したくなるような成績だ。
トラックをメインに考えているという中谷だが、箱根駅伝はどう捉えているのか。思い入れはあるのだろうか。