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10万人の熱狂に包まれたジャパンカップで、
ロンジンが刻んだアーモンドアイの「偉業」。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2018/12/07 11:00
内村航平が東京競馬場に。
レース当日、ロンジンエレガンスアンバサダーをつとめる体操選手の内村航平も、東京競馬場を訪れていた。スタート前、その姿がターフビジョンに映し出されると、スタンドから大きな拍手が沸き起こった。
第38回ジャパンカップのゲートが開き、14頭の出走馬がターフに飛び出した。
スタンドが大歓声に揺れる。内村航平とともに観戦したロンジンCEOのウォルター・フォン・カネルが、「スタート直後からの熱狂は、アメリカにもヨーロッパにもない、日本独自の楽しみ方だと思います」と語っていた盛り上がりだ。
単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持されたアーモンドアイ(牝3歳、父ロードカナロア、美浦・国枝栄厩舎)は、主戦騎手のクリストフ・ルメールを背に、3、4番手のインという絶好の位置につけて1コーナーに入って行く。
14頭が1、2コーナーを回り、向正面へ。
先頭を走るのは、昨年の菊花賞を制したキセキ。前走の天皇賞・秋でも逃げて3着に好走するなど、調子を上げている。
アーモンドアイは、キセキから3馬身ほど離れた3番手の内につけている。
前半1000m通過は59秒9。数字だけ見ると、いわゆる「平均ペース」で、スーパーレコードで決着するほど速くはない。
その流れを変えたのは、キセキに騎乗した川田将雅だった。キセキはスタミナでは誰にも負けないが、ヨーイドンの瞬発力勝負になると分が悪い。そのため、川田は、ここから少しずつペースを上げた。今回の2400mをスタートからゴールまで、3ハロン(600m)ずつに分けて見ていくと、35秒9-35秒8-34秒5-34秒4となる。こうして後続馬になし崩しに脚を使わせて瞬発力を封じ、スタミナがモノを言う消耗戦に持ち込んだのだ。