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登れない悔しさが“達成感”を大きくする。
クライミング人口がどんどん増える理由。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byMiki Fukano
posted2018/11/30 11:00
完登の喜びを仲間と分かち合う。
「力があればできる、男性の方ができると思っていました。でも女性の方が上手だったり。体の使い方など細かなところで登れたり登れなかったりするんだということを知りました」
できる人たちを見て、自分ができない悔しさを味わった。だが知ったのは悔しさばかりではなかった。
「できなかったコースを、1カ月ずっとやり続けたことがあるんですよ。そして初めてできたときは、祝杯をあげましたね(笑)。できたときの達成感はすごかった」
そんな“快感”を知ったのは、滝さんだけではない。クライミングを始めたのを機に、バーテンダーから別のジムのスタッフに転職したという田中さんはこう語る。
「はじめはまったく完登できると思わなかった課題や、最初から無理だと決めつけていた課題ができたときに大きな喜びを感じました」
そしてこう続ける。
「それを仲間と分かち合える。それもクライミングならではだと思います」
田中さんが知ったのは、1人で成し遂げる達成感ばかりではなかったのだ。
同じ思いを抱いた人に、フォトグラファーの深野未季さんがいる。
「ホールドがカラフルで、ポップな感じがいいな、と思いました」
と、第一印象を語る深野さんは、知人に連れてこられたのをきっかけにクライミングの魅力を知り、出張先でも時間があればジムを探して登るほどになった。
全国のさまざまなジムで心に残ったのは、人々の温かさだった。
「壁を登っていると、まわりの人たちがアドバイスしてくれたり、『ガンバ!』って応援してくれたりするんです。大人になると、なかなか頑張れ、って言ってもらえる機会はないじゃないですか。それもクライミングのよさだと思います」