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登れない悔しさが“達成感”を大きくする。
クライミング人口がどんどん増える理由。
posted2018/11/30 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Miki Fukano
東京・菊川駅のほど近く、通り沿いを進むと、背の高いガラス越しに、カラフルなホールドがちりばめられた壁が目に映る。そこに手足をかけて登る人、壁面をじっとみつめたまま考えている人の姿も目に入る。「ヘッドロッククライミングジム」である。
「平日は仕事終わりに来る人が多いですね。土地柄、地元の方も多いです」
ジムの店長、渡部昇平さんは言う。
今日、ボルダリングのジムを目にすることは、決して珍しいことではなくなった。この数年でジムは飛躍的に増え、そしてジムに通う人もまた、増えている。
「以前はどちらかというとクライミングをやっている方たちが作るジムが多かったけど、今はクライミングと関係のない企業が始めたりするケースも増えています。場が増えたことで、人の目に触れる機会もまた増えたので、興味を持つ方やボルダリングというスポーツがあるんだと知る方も増えたと思います」
ただ、知るきっかけが増えたからといって、そこに“特別な魅力”がなければ、続けていくことはできないだろう。
渡部さん自身は、11年前、「何か運動を」と思ったのをきっかけに始めたという。以来、いまでは経営にまで携わるようになった彼の大きなモチベーションは、最初に感じた「悔しさ」だった。
「もちろん面白かった、というのはありますが、どちらかというと悔しさの方が強かったですね。1つの課題、コースが登れなかった。その悔しさからまたやりたいと思い、それからずっと続いています」
同じように、悔しさを理由にあげるのは、同ジムの常連の1人、滝さんだ。
「同僚と『やりたいな』と言っていて、ここにジムがあるのを知って来るようになりました」
始めてみると、先入観は覆された。