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ブッフォンの後を追う才能たち。
イタリアに名GKが生まれる理由。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/11/14 10:30
インドネシア人の父とイタリア人の母を持つアウデロは、19歳でユーベのトップに昇格。今季からサンプドリアにレンタル。
練習法は「私のオリジナル」。
今年70歳になる老コーチは、若き日のブッフォンやシリグ(現トリノ)を発掘、指導したことで知られる名伯楽だ。昨年の夏まで復活を期すパルマで働き、奇跡の連続昇格を陰で支えた。
フルゴーニはたくさんの興味深い話をしてくれたが、彼の練習法について尋ねたとき、意外な反応をした。
今やテクノロジーの発達とともに世界中で指導法や練習方法、メソッドの共有化が推奨されているご時世だが、フルゴーニは実戦で起こりうる様々な場面を想定した練習法について語ってくれた後、「私のオリジナルだ」と強調した。
彼の柔らかな物腰と相反するものだったから、強めた語気が印象に残った。
そういえば、アポを取るのにも苦労した。彼は自分が表舞台に出ることをあまり望んでいなかった。
中田と同僚だった元GKの今。
「GKコーチ」という職業はちょっと独特だ。
いわゆる「監督」になるには、ナショナル・トレセンできちんと整備されたライセンス制度の指導者養成カリキュラムがある。指揮官を目指す者は、指導論から戦術パターン、栄養学やメディア対応術まで幅広く学ぶ。
ところが、GKを指導するコーチは専門性が高く、彼らは概して孤高で一匹狼みたいなところがある。
まだ小学生だった頃のアウデロを発掘したのは、ロッカーティという元GKだ。セリエA出場歴はほとんどなく、2004年にフィオレンティーナで中田英寿とチームメイトだったが、街角で彼の名を出しても覚えている人はほぼ皆無だろう。ロッカーティは経営する自分のサッカースクールから、信頼のおけるユーベ下部組織のコーチにアウデロを推薦し大きく育てさせた。
トリノの育成部門の試験官は、入団テストを受けに来た16歳当時のゴミスに一度、失格の烙印を押した。その頃、ゴミスはFWを掛け持ちしていたからだ。「ただし、GKとしてなら化ける見込みがある。君を受け入れよう」と試験官が扉を開いたからこそ、ゴミスは今、セリエAで戦っている。