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低反発金属バット導入は一石三鳥だ。
高校野球の金属バット問題を考える。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKo Hiroo

posted2018/11/08 08:00

低反発金属バット導入は一石三鳥だ。高校野球の金属バット問題を考える。<Number Web> photograph by Ko Hiroo

現在のシステムでは、打者だけが高校からその後のステージに上がる時に苦労することになる。

投手戦ばかりになるわけではない。

 低反発金属バットを使うと投手戦主体になる、というのは一般論としては正しいのだろうが、10月20日に行われた富田林ボーイズ、大阪福島シニアとの2試合は9-3、6-3と2試合とも打撃戦になった。14日の試合ではなかった柵越えの本塁打も2本出た。

 この日、堺ビッグボーイズと対戦した大阪福島シニアの監督は「この話を聞いてから、練習で木製バットを使うようにしました。1カ月ほどそういう練習をしたので、低反発金属バットでも結構打てました」と言った。

 また先週は打てなかった堺ビッグボーイズの野手も、この日はいい当たりの長打を打った。

「試合を経験して打ち方を変えなければと思って、この1週間それを意識していたので打てた」と語った。

 低反発金属バットになったからといって、貧打戦が続くとは限らない。対戦相手のレベルにもよるが、今の野球選手は自分で考えて、合理的な練習をする習慣がついているので、意外に順応するのが早いのではないかと思った。

 試合の後、特別にお願いして、選手たちに低反発金属バットとこれまでの金属バットで交互に打撃練習をしてもらい、それを捕手の真後ろにネットを置いてもらって観察した。

 これまでの金属バットの場合、内野の頭を越えるあたりでぐんと伸びる打球が多いのに対し、低反発金属バットはそこから失速する打球が多かった。

 従来の金属バットは「羽子板」と揶揄されるように、スイートスポットが広く、太い部分に当たれば泳ぐようなスイングでもスピンがかかって打球が伸びていくが、低反発金属バットは木製バットと同様スイートスポットが小さいので、当り損ないは失速する。単なる反発係数の問題だけでなく、打撃技術の問題もかかわっていることを実感した。

有力選手には木で練習させるチームも。

 実は個別の対応としては、「金属と木製のギャップを埋める」試みは、かなり早くから行われていた。堺ビッグボーイズの瀬野竜之介代表は話す。

「筒香選手のあと、いま西武で活躍している森友哉選手がチームに入ってきました。打撃センスが抜群だったので、彼ともう1人の有望選手には木製バットを渡して“これで練習するように”と伝えました」

 森友哉は大阪桐蔭高から西武に入った1年目、早くも6本塁打、打率.275という成績を残したが、中学時代から木製バットを使っていたことで、ギャップをあまり感じなかったのではないか。

 昨年、ロッテにドラフト1位で入団した履正社高の安田尚憲も、高校時代から木製バットを使っていたと言われる。

「甲子園の酷暑」の問題や「投手の酷使」の問題は、球場や学校のさまざまな事情、日程の問題などが絡み合って容易に改革できない。

 しかし「金属と木製のギャップ」の問題は、高野連が低反発金属バットの導入を決めさえすれば、すぐにでも解決するのではないか。

 低反発金属バットは、アメリカのメーカーしか作っていないから金属バットの市場が変化してしまう、という危惧があるかもしれないが、ミズノはすでにアメリカでBBCOR.50仕様のバットを販売している。アマゾンを検索すれば、ミズノ製の低反発金属バットがいくつも出てくる。

 学校への費用負担を考えるならば、例えば3年程度の移行期間を設けて「2021年からは低反発金属バットを導入する」とすれば、学校もメーカーも無理なく準備ができるのではないか。

 日本野球界に存在する「金属と木製のギャップ」は、「ガラパゴス化」によって球児たちを苦しめるだけで、百害あって一利もない「段差」だ。これを埋める努力をするのは大人の責任だろう。この件に関して活発な議論が起こることを期待する。

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