酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
低反発金属バット導入は一石三鳥だ。
高校野球の金属バット問題を考える。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKo Hiroo
posted2018/11/08 08:00
現在のシステムでは、打者だけが高校からその後のステージに上がる時に苦労することになる。
筋トレが一般化し、バットの性能も向上。
近頃の強豪校はトレーニングルームを完備し、球児たちは筋トレに励んでいる。筋骨隆々の体でボールを軽々とスタンドインさせる。金属バットそのものの性能も、以前より飛ぶようになったという声を聞く。
2001年に日本野球規則委員会は、アマチュア野球で使用する金属バットの重量を900g以上とし、バットの最大直径を67ミリ未満とするなどのルール改正をしたが、本塁打の量産は止まっていない。
この数字を見ればわかるように、木製バットの時代と金属バットの時代では、野球そのものが変質している。
U18での日本の高校球児の苦戦は「金属バットと木製バットのギャップ」そのものだと言っても良いだろう。
大学も、プロも、社会人もほぼ木のバット。
球児たちが高校を卒業してからも野球を続ける場合、ほとんどが木製バットしか使用を許されない。プロ野球、大学野球、社会人(一部金属バットを使用)、独立リーグ、さらには海外のプロリーグも金属バットを使用していない。
高校球児が卒業後も野球をしようと思えば、必ず「金属と木製のギャップ」に悩むことになる。
今年の1月14日、DeNAの筒香嘉智は自らの出身チームである少年硬式野球の堺ビッグボーイズのイベントで、今の少年野球への提言をして注目を集めたが、その中でもこの問題に言及した。
「いま日本で使われている金属バットの弊害は大きいと思います。日本の金属バットは本当によく飛びます。年々素材のいいバットが出てきて、飛距離は伸びています。(中略)
日本では昨年(2017年)、夏の甲子園の1大会のホームラン記録が更新されました。もちろん優秀な打者が記録を破ったのでしょうが、圧倒的にバットのおかげで飛んでいる姿も目にします。これは子どもたちのためになっていないと思います。(野球を続けて)木製バットで苦労するのは子どもたちです。事実、苦労している選手を何人も見ていますし、僕も木製バットになれるまでに時間がかかりました」
筒香はその提言の中で、木製バットと同様の反発係数に調整した金属バットを使用すべきだと言った。