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震災、W杯優勝、海外……多くの経験を経て
なでしこジャパン・鮫島彩が学んだものとは。 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2018/11/07 11:00

震災、W杯優勝、海外……多くの経験を経てなでしこジャパン・鮫島彩が学んだものとは。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

頑張ろうとしている自分を認める。

 辛い時期にもうひとつ助けになったのは、当時サポートいただいていた方に「まずはそれだけ頑張ろうとしている自分を認めてあげなきゃダメだよ」と言われたことでした。そこで、“そうか今自分はフランスに来て、ひとりで頑張ってるんだ”って思えた。そこを認めはじめたら、すごく楽になりました。“今日はここまでできたから大丈夫、よく頑張った”と思うところから段階的にはじめていったら、無理をすることもなくなったし、ケガも減って、コンディションも上がって、楽しくプレーできるようになりました。それまでは常に上のレベルでベストを出さなきゃいけないと思っていたから苦しかったです。でも、今日、今いる場所で自分のベストを尽くせばいいんだって思えるようになったら、コンディション的にも気持ち的にも浮き沈みがなくなりました。

 例えば「うわ~今日調子悪いな~」と思う日はあるんですね。だったら自分がボールを持つのではなくて、見えた人にパスを出そうとか、このトラップをすることだけにまず集中しようとか、シンプルに考える。調子が悪いときってだいたい注意散漫で、もっとできるのにとか、一発逆転を狙いがちです。でもそういうことをやめたら、色々なことに対処しやすくなりました。

積み重ねたものが、いつか何かに。

 考えてもどうにもならないことってあります。昔はそういうことに悩んで、苦しくなった時期もありましたが、いつからかタラレバを考えることはなくなりました。例えば、戦術的なことだったり、次へと活きることは、もちろん考えます。でも、あの選択をしていたら、とか変えられないことは考えません。選択の価値は今すぐ分からなくてもいい。明日でも、何年か先でも、それこそ死ぬときでも、その意味が分かればいいやって。過去を振り返ることはなくなりました。

 ワールドカップで優勝して、あの時期「力になった」という言葉をいただいたりすることがたくさんありました。でも、震災でチームが活動できなくなったりするなかで、どうにか私がサッカーを続けられるように協力してくださった方や、応援してくださる方々がいて、私はワールドカップに出場することができました。

 あの震災のとき、自分にできることなんて本当に何もないと思いました。だからこそ、生きた者として、まずは毎日、自分がやるべきことを一生懸命やらなくてはいけないと気づきました。そう思ったのは、多分私だけじゃないと思います。そうやってひとつひとつ必死に積み重ねていったものが、いつか何かにつながっていく。その思いを忘れずに、これからも今いる場所で、自分のできることを一生懸命やっていきたいです。

鮫島彩

鮫島 彩Aya Sameshima

1987年6月16日、栃木県生まれ。女子サッカーの名門・常盤木学園高校時代に頭角を現す。卒業後、東京電力女子サッカー部マリーゼに加入。2008年になでしこジャパン初選出。震災の影響によるマリーゼの活動自粛を受け、2011年に渡米。同年のFIFA女子W杯は全試合にスタメン出場し、優勝に貢献。その後、フランス・モンペリエHSC、ベガルタ仙台レディースに所属。2012年のロンドン五輪では銀メダルを獲得。2015年にINAC神戸レオネッサに移籍。同年のFIFA女子W杯では準優勝。現在、なでしこジャパンの主将を務める。

毎回1名のゲストの「生き方」「人間性」にフォーカスし、そこにある「美しさ」をあぶり出すBS朝日の番組。ビジュアルだけではなく、精神的、健康的など様々な角度から“肉体に宿る美”を探ります。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

MC:浅尾美和

第28回:鮫島彩(サッカー)

11月9日(金) 22:00~22:24

INAC神戸レオネッサ、そしてなでしこジャパンでも若手を牽引する立場になった鮫島彩選手。ベテランと呼ばれる立場になり心境はどう変わったのか。さらに進化を遂げるために大切にしていることとは?彼女の素顔に迫る。

第29回:中澤佑二(サッカー)

11月16日(金) 22:00~22:24

プロサッカー選手として20年目のシーズンを迎えた中澤佑二選手。なぜ40歳になった今なおピッチに立ち続けることができるのか。プロサッカー選手になることを夢見ていた頃から変わることのない向上心について語る。

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