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女子レスリングが急激にV字復活!
要因は選手とコーチの信頼関係。
posted2018/11/03 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
今年のレスリング世界選手権(10月20~28日・ハンガリー)は何かと話題の多い大会となった。男子フリースタイルでは乙黒拓斗(山梨学院大)というスターが誕生した。
乙黒の持ち味はクリエイティブで攻撃的なレスリング。まだ19歳での初出場だっただけに他国からしてみればほとんどノーマークの存在だったが、あれよあれよという間に勝ち上がり、金メダルを獲得した。
一方、男子グレコローマンスタイルは「優勝の大本命」という呼び声も高かった60kg級の太田忍(ALSOK)が2回戦で敗れる大波乱。結局、メダルはゼロという惨敗に終わった。
スタイルで明暗を分けた男子とは対照的に、女子は金4、銀1、銅2と圧倒的な強さを見せた。昨年の同選手権では金4、銀1、銅1だったのだから、それをひとつ上回るメダル数を獲得したことになる。
陰のMVP、志土地コーチ。
今年になって長らく女子の強化を務めていた栄和人氏が伊調馨や彼女の指導者に対するパワハラ問題の責任をとる形で強化本部長を辞任。東京オリンピックに向け、日本の女子は再編成を余儀なくされた。
栄体制はオリンピックや世界選手権でとてつもない実績を残していただけに、新体制を任されたスタッフは大きなプレッシャーを感じたことは想像に難くない。しかも、新しい地盤はすぐ踏み固まるとは限らない。案の定、今年8月のアジア大会では金ゼロと大惨敗に終わっている。それから2カ月、日本女子は、短期間のうちにいかに立ち直ったのか。
西口茂樹・強化本部長は陰のMVPとして志土地翔大コーチの名前をあげた。
志土地コーチは普段至学館大でコーチを務めている。今回55kg級で2年ぶりに世界一に返り咲いた向田真優(至学館大)も復活のきっかけとして志土地コーチの献身的な指導をあげた。
「志土地コーチがいつも一生懸命に教えてくださった。その気持ちに絶対応えたいという思いが今回の金メダルにつながったんだと思います」