終われない男の対談集BACK NUMBER
46歳でも進化するカミカゼ葛西紀明。
鏑木毅も驚いた100%の「落ちろ!」。
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礒村真介Isomura Shinsuke
photograph byShin Hamada
posted2018/11/06 08:00
![46歳でも進化するカミカゼ葛西紀明。鏑木毅も驚いた100%の「落ちろ!」。<Number Web> photograph by Shin Hamada](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/700/img_f0a12ebf2f94da5debecdba00da9a42e153679.jpg)
対談後、ランナーも多い皇居周辺で鏑木と葛西はなおもアスリート談義を続けた。
鏑木「贅沢な家に生まれていたら……」
鏑木 僕は平昌のとき、スキージャンプをトレッドミルで走りながら観ていました。葛西さんの番になると、勝手に自分を重ねてしまうから、こっちまで胸が締め付けられちゃって……。僕が走る160kmのレースでは、スタートから10時間ほどたった後半にスイッチを入れればいい面もあります。でも、ジャンプは瞬間勝負ですよね。しかもオリンピックは4年に1度。やはり他の試合とは違いますか?
葛西 2010年のバンクーバーまでは「五輪はすごい舞台だ」というのが潜在意識に刷り込まれ、縮こまった気持ちだったんです。でもソチに向かうころから、自分自身が五輪に合わせていくんじゃなくて、五輪が俺に合わせているんだ、という大きい気持ちで戦えるように変わりました。
鏑木 いい形で歳と経験を重ねて、いろんな状況をワイドな視点で見られるんですね。若い選手にはわからない境地だろうなぁ。とはいえ緊張はしますよね、さすがに。
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葛西 もちろん。緊張で気持ち悪くて、気持ち悪くて、飛ぶ前には心臓が口から飛び出そうなくらいです。自分の番になって、ゲートの前でいざというときはその場所から逃げ出したくなります。寝る前にメンタルトレーニングの一貫として、当日の細かい動きをイメージしたりもするんですが、やっぱりイヤですよ、あの緊張は。
鏑木 それを聞いて少し安心しました(笑)。ジャンプ界のなかでもメンタルが強いと言われているんですか。
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葛西 忍耐力や我慢する力は備わっているのかなと思います。僕は小さい頃はすごく貧乏で、お小遣いはもらえなかったし、オモチャもなかった。我慢が多い生活でした。そんな生活の中で母親が強い人だったので、それを間近に見て身についたのかな。
鏑木 僕も家が農家で、自給自足のような生活でした。おやつは乾燥イモで。そういう生活を経験していたから、月間1000km以上というトレーニングもこなせている気がします。
葛西 走るというのは耐えなきゃダメですよね。
鏑木 贅沢な家に生まれていたら耐えられなかったかもしれません。