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46歳でも進化するカミカゼ葛西紀明。
鏑木毅も驚いた100%の「落ちろ!」。 

text by

礒村真介

礒村真介Isomura Shinsuke

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photograph byShin Hamada

posted2018/11/06 08:00

46歳でも進化するカミカゼ葛西紀明。鏑木毅も驚いた100%の「落ちろ!」。<Number Web> photograph by Shin Hamada

対談後、ランナーも多い皇居周辺で鏑木と葛西はなおもアスリート談義を続けた。

「家建てるぞ、車買うぞ、と」

鏑木 では、葛西さんの中で年齢により衰えを感じている部分はないんですか?

葛西 うーん、もちろん全体的にちょっとずつは落ちていると思うんですけど、大きく落ちたものはありませんね。

鏑木 驚異的! 何か秘訣があったら教えてください。

葛西 うーん、うまく答えになっているかわかりませんが、じつは小さい頃から鏑木さんの本業であるランニングを続けているんですよ。もちろん持久力をつけるためという面もあるんですけど、それ以上に、半年に渡る海外遠征を乗り切る基礎体力や耐える力が備わります。

 僕にとっては体力面だけでなく、精神面にも必要な時間です。走るときっていろいろなことを考えるじゃないですか。ジャンプのことはもちろん、家建てるぞ、車買うぞ、といったモチベーションにつながることとか。

鏑木 なんだか嬉しいなぁ。

葛西 一番のメンタルトレーニングじゃないかなと思います。1回30分前後。汗かくのが好きなので、サウナスーツ着て走ってます。

鏑木 いろいろな研究で実証されてきていますが、安静時に考えごとをするよりも、ポジティブなプラスの発想が出てきますよね。

葛西 遠征先のホテルの部屋でじっとしていると、昔のことばかり思い返したりしますしね。それに海外の強い選手もやっぱり走っていますよ。遠征中に早起きして外に出ると、彼らがランニングをする姿を見かけますから。でも、日本の若い選手はほとんど走ってないんです。だから、たぶん僕にはずっと勝てない(笑)。

鏑木 スポーツの世界では、野球でもサッカーでも40歳を超えると若い選手には敵わないのがいわば「常識」になっていますよね。だから46歳の葛西さんがテレビで「北京を目指す」とコメントしていたのは、失礼ながら強がりで言っているのかなと感じていたんです。ただ、まったくそうじゃないということがよく分かりました。

葛西 大丈夫ですかね、こんなこと言ってて(笑)。僕もさすがに腰とかヒザとかの関節には年齢を感じるので、トレーニングの内容やボリュームは変えています。若い頃と同じトレーニングもやろうと思えばできますが、やるとケガをしてしまう。やればやるほど自信がつくので昔はガムシャラでしたが、今は故障しないことを第一に考えています。

鏑木 わかります。経験を重ねてくると、これ以上やったらケガしそうだなと察知できるようになりますよね。僕も世界3位になったときのトレーニングというのがあって、そのときの練習日誌は心のよりどころになってますが、その練習を今そのまま実践するとケガをしてしまう。だから、どこまで若い頃のトレーニングを取り入れ、どこで我慢するか。創意工夫のしどころでもありますね。あと、話がずれますが、ケアのための温泉は欠かせません!(笑)

葛西 僕も温泉は大好きで、よく行くようにしています。海外遠征中は温泉に行けないんですけど、その代わりオフの日は観光に出かけますね。今までで1日中寝ていたという日は一日もないんです。子どものころから、朝に目が覚めたら「今日は何しよう」ってワクワクしている。

鏑木 ああ、そこに何だか葛西選手が長年第一線で活躍されているカギがあるような気がします。

【次ページ】 鏑木「贅沢な家に生まれていたら……」

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