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欧州で奮闘するカレン・ロバートは、
なぜ木更津にクラブを創ったのか?
text by
中田徹Toru Nakata
photograph byToru Nakata
posted2018/10/30 08:00
千葉県でサッカーキャリアをスタートさせたカレン・ロバート。その感謝を行動に移している。
クラブの意味は、さすらい人。
うむ? なぜにベトナムへ?
「木更津ではベトナム人が働いているんです。将来、労働力を移民に頼るか、それともロボットかといったら、僕は両方だと思ってます。大きな会社、都会の会社はロボット。だけど、中小企業には移民が増えると思います。木更津にはベトナム人の移民がもっと増えるでしょう。ならば、ローヴァーズの選手もベトナム人がいいかもしれない。
だからベトナムの英雄レ・コン・ビン(元ベトナム代表キャプテン。コンサドーレ札幌でもプレー)と会って、『自分はこういう者です。ベトナムのサッカーが好きなので、将来はローヴァーズをステップアップの場に使ってほしい。日本の環境に慣れるためにも、木更津は都会じゃないし、物は揃っているし、物価も安いし、安全だし、空港にも近いから良いと思います』と挨拶に行ってきました」
カレンはどのような思いでローヴァーズという名前をクラブにつけたのだろうか。
「英語で『さすらい人』という意味です。創設者3人を港に見立てて『みんな、どこかに行っても、疲れた時には戻って来やすいクラブにしたい』という思いを込めました。ブラックバーン・ローヴァーズが有名ですが、イギリスにはローヴァーズというクラブが多いんです。この前のFAカップの対戦相手がヘーバリル・ローヴァーズだったので、僕としてはちょっと気まずかった。6-0で勝ちましたが、申し訳なかったです。
僕自身がさすらい人。成功を求めて長旅をし、失敗してもまた立ち上がるという意味がローヴァーにはあるんですが、僕そのまんま。僕はその姿をクラブのみんなに見せないといけない」
無所属時代に感じた楽しさ。
イングランドに来る前の1年半、カレンは当時の代理人の“エアオファー”に翻弄され、無所属の時期が続いた。
「チームが無くて、本来ならば辛い時期だったんですよ。でも、ちょうど、その時期の2年前に、ローヴァーズ・ジュニアユースの1期生が始まったんです。最初はヘディングすらできないほど下手だったのが、1カ月、2カ月と経つうちにうまくなっていって、これまで勝てなかったチームに勝つようになった。
そういうのを見ていると楽しくって、僕はまだ現役選手なのに、プレーすること以上に楽しいことを見つけちゃって『ヤベえ』って。この間、その子たちの最後の試合があったんです。僕はイギリスにいるから、見に行くことができず申し訳なかった」