球体とリズムBACK NUMBER
ルヴァン決勝は湘南vs.マリノス。
ゴール量産、独自路線を見逃すな。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/10/25 12:00
神奈川を本拠地とする2クラブの激突。2018シーズン初のタイトルホルダーとなるのはマリノスかベルマーレか。
湘南スタイルの本当の意味。
土曜日に行われるルヴァンカップ決勝の相手は、横浜F・マリノスだ。同じ神奈川県を本拠とするチームとの対戦である。J1制覇3回、天皇杯優勝2回、Jリーグカップも1度制している名門だ。胸を借りると言っても間違いではないだろう。
「マリノスとやるのは、個人的に嬉しい。人生で何度も負けている相手なので」と曹監督は語った。また現在の横浜については賛辞を送っている。
「アンジェ(・ポステコグルー)が監督になって、チーム全体を改革している。それが未来につながると信じて、強い意志を持ってやっているはず。今のマリノスは相手によって戦い方を変えてくるようなチームではない。自分たちもそう。非常に楽しみです」
ショートパス主体のポゼッションスタイルを展開する横浜と、激しいプレスから一気にゴールを狙う湘南。ファイナルの図式をわかりやすく表せば、そうなるだろうか。しかし当然ながら、それだけではない要素をどちらも持っている。49歳の指揮官も「湘南スタイル=走力、がむしゃら」といった安易な結論づけは拒む。
「走るのは、絶対に必要なサッカーの基本。そうではなく、いかに走るのか。選手たちが自ら決断してどう走るのか。そうじゃないと、観ていて面白いサッカーにならない」
監督として一番嬉しかったこと。
ただ湘南スタイル、そのフレーズ自体は日本のサッカーファンにかなり浸透している。リーグカップ決勝へ駒を進めた後、曹監督を驚かせることがあったという。
「時間があるときに、月に2回ぐらい小学生を教えているんですけど、彼らを決勝に招待して、色紙に選手たちへのメッセージを書いてもらったんです。そしたら、普通なら誰々選手がんばってとか、優勝しましょうとか書くと思うんだけど、8割ぐらいの子供たちが『湘南スタイルで優勝しましょう』だって。小学生がですよ。びっくりして、泣きそうになった。これは財産だな、と。監督をやってきて、一番嬉しかったかもしれない」
2005年に育成年代の指導者として湘南に加入し、2012年から監督を務め、クラブ史上最長の在任歴を更新し続けている。その間、多くの選手を育てながら、現在に通じる独自のスタイルを確立してきた。ただそれも、「全員で積み上げてきたこと」と自分の手柄にはしない。