Jをめぐる冒険BACK NUMBER
柏・大谷秀和と鈴木大輔が語った、
残留争いでの“割り切り方”とは。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/10/10 07:00
今季の残留争いは過去類を見ない大混戦となっている。柏が広島相手にもぎとった勝ち点3は、大きな意味を持ちそうだ。
「クリスの頭を単純に使おう」
大谷の言葉を補足するように、鈴木も語る。
「アップをしながら選手間で話し合ったし、アップ前やアップ後の監督のミーティングでも話がありました。スローインを後ろに下げるのはやめよう、GKにバックパスをするのはやめよう、なるべく前に付けよう。
試合中も、真ん中の裏を狙うよりサイドの裏に流し込もう、クリスの頭を単純に使ったほうがいいんじゃないか、クリスを左に張らせて(相手の右サイドバックの和田拓也との)身長差を生かすべきじゃないかとか、話し合いながら決まりごとを徹底しました」
大谷と鈴木が語った割り切りと徹底――。それこそが柏にあって、広島になかったものだった。広島の城福浩監督も「前半はもうちょっと徹するような戦いをしないといけなかった。後半風が少し止むという情報があったなかで、前半風下になったかと。そうなった時点で、いろんな徹し方がもう少しあったかもしれない」と悔やんだ。
広島と柏が置かれている状況の差。
もっとも、広島は簡単に割り切れない状況でもあった。
首位を快走してきた広島はリーグ戦でここ3試合勝利から見放され、前節ついに2位に転落した。とはいえ、0-1で敗れた前節のガンバ大阪戦だって内容が悪かったわけではない。それなのに、これまでやってきたサッカーを放棄すれば、選手たちの自信が揺らぎ、積み上げてきたものを失いかねない。
一方、優勝争いを続ける広島とは対照的に残留争いに巻き込まれている柏もリーグ戦でここ4試合勝利から遠ざかっていた。クリスティアーノ、オルンガ、瀬川祐輔、江坂任、伊東とJ1でも上位クラスの攻撃陣を揃え、実際にゴールは奪えているが、チームとしてゲームモデルやプレー原則が共有されておらず、チグハグな印象が否めない。
それゆえ割り切りやすく、むしろ準備してきたものを捨ててでも、悪い流れを断ち切りたい状況だったのだ。