Jをめぐる冒険BACK NUMBER
柏・大谷秀和と鈴木大輔が語った、
残留争いでの“割り切り方”とは。
posted2018/10/10 07:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
大型の台風25号の影響で10月6日、中国地方では強風が吹き乱れ、平和記念公園の約15メートルの樹木が根元から倒れたという。
エディオンスタジアム広島で行なわれたサンフレッチェ広島対柏レイソル戦もまた、強風の影響を免れなかった。
広島のGK林卓人の渾身のキックがみるみるうちに押し戻され、自陣半ばあたりに落ちる。グラウンダーのパスでさえ風で流され、コースから大きくズレる。「普通にサッカーができるような状態ではなかった」と柏のDF鈴木大輔は振り返った。
だが前半、風上に立った柏は、強風をまんまと味方につけた。
「前半は風上だったのでクリアするというより、相手の裏に落とすことを考えていた」
鈴木がそう語ったように、ロングボールを使って攻め込んだ柏は23分、GK林がパンチングでクリアしたボールを伊東純也がダイレクトで合わせて先制する。
27分にも相手のクリアを拾った伊東が蹴り上げるようにしてミドルを決めると、35分には速攻からオルンガが追加点を奪う。なかでも伊東のゴールはいずれもペナルティエリアの外から放ったシュートが風の勢いに乗ったもの。「風を利用して、上手くいった」と自画自賛したファインゴールだった。
風上に立てた思惑通りの前半。
ただし、柏が風を味方に付けたのも、前半に風上に立ったのも、偶然ではない。
「風向きがどうなるか分からないから、先手を取りたいと思っていたので、(キャプテンの)クリス(ティアーノ)がコイントスで勝ったのは非常に大きかった。なので、クリスのコイントスが(勝因の)50%くらい(笑)」
ボランチの大谷秀和が明かす。加藤望監督から「風上を取れ」との命を受けたクリスティアーノがまんまとコイントスに勝ち、メインスタンドから見て左側のエンドを選び、思惑どおり前半、風上に立てたのだ。大谷がさらに続ける。
「試合前、グラウンドでアップをしてみても難しい状況だということは分かった。だから、ボールを下げたら前に蹴る、リスクのあるプレーはしない、ということをチームとして徹底した。準備してきたものとは違うけど、こういう状況を受け入れたなかでタフにプレーしようとみんなで話していました」