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クライフは本当はW杯に行けなかった!?
オランダvs.ベルギー、伝説の誤審。 

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ロベルト・ノタリアニ

ロベルト・ノタリアニRoberto Notarianni

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photograph byL'Equipe

posted2018/09/26 07:30

クライフは本当はW杯に行けなかった!?オランダvs.ベルギー、伝説の誤審。<Number Web> photograph by L'Equipe

11番のユニフォームがヤン・ベルアイエン。当時のベルギー代表の中心的選手として大いに活躍していた。

極上のパスでも得点できないオランダFW。

 ベルギー側の反応はどうだったか。

 試合終了後に見せたゲタルス監督の態度は、とても節度あるものだった。

 0対0の引き分けに終わった前年のアントワープでの試合と同様に、オランダの激しい攻撃を防ぎ切った自らのチームへの称賛を彼は惜しまなかった。

 ゲタルスはオランダがゲームを支配するのを予め熟知しており、実際にGKのクリスチャン・ピオは、75分に放たれたヨニー・レップのヘディングシュートをはじめ4~5回の決定機を超人的なセーブで防いでいたのだった。

 さらに中盤の4人(セメリングとドックス、ベルアイエン、マルテンス)はオランダに対してほとんど無力で、それでも均衡が保たれたのは、アリー・ハーンとレップがクライフからの極上のパスを信じられない不器用さで決められなかったからだった。

ビデオを見ると間違いなく誤審。

 ただ、ゲタルスが指摘したように、ベルギーが予選敗退したのは新たに適用された規則――同勝ち点の場合は、この試合に関してはプレーオフではなく得失点差により順位を決める――によるものであるのも事実だった。

 得失点差はベルギーの12に対してオランダは22。

 ベルギーの堅守は遂に崩せなかったとはいえ、オランダはアイスランドとノルウェーから大量得点をあげた。とりわけオスロでの9対0の勝利は、ゲタルスをして「ノルウェーのゴールはチームバスの運転手が守っていたのか?」と言わしめるほど一方的なものだった。

 それでは選手のベルアイエンはどう振る舞ったか?

 悲運のヒーローは《世紀の破壊》をやり損ね、そのゴールは誤った判定により取り消されてしまった。

 リプレイのビデオを見ると、彼の前にオランダのディフェンダーたちが位置しているのがハッキリと映っている。だが、彼自身はあくまでもスポーツマンシップを貫き、誤審に関しても、ときたま思い出したように触れるだけだった。

【次ページ】 サッカーの歴史を変えていた線審。

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