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“派手な今野泰幸”はガンバを救うか。
復帰後は奪う、走る、そして吠える。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/09/20 17:00
ヴィッセル神戸戦では後半からイニエスタを監視して勝利に貢献するなど、今野泰幸の力は今もなお錆びついていない。
右足首に痛みは抱えたままだが。
もっとも、未だに痛みを抱えたままの右足首は今野がもっともこだわる「100%のプレー」を妨げているのも事実である。
宮本体制下で初となる連勝を賭けた9月15日の神戸戦では3バックの一角で先発。慣れないポジションということだけでなく、万全には程遠い足首ゆえのジレンマも抱えながらのプレーだった。言い訳がましい言葉を嫌うはずの鉄人が、本音を打ち明ける。
「痛みがある日もあれば、状態がいい日もある。自分のタイミングでボールを取れると思う時に、相手に強くぶつかることをためらってしまうことも多々あるし、体を入れ替えられてしまった時には何やっているんだろうという自分の悔しさもある」
ブルドーザーのような迫力でボールを刈り取る本来のパフォーマンスはまだ見せきれていない今野だが、メンタル面で一味違う姿が神戸戦ではみて取れた。
途中交代後、激しく両手を叩き。
黙々と己の役割を遂行する職人肌のプレーヤーだったはずの35歳は、83分に高宇洋と交代。ベンチに下がる直前、ピッチ内に向かって「頼むぞ」と言わんばかりに激しく両手を叩く姿は、チームリーダーのそれだった。
「俺は今まで勝っている展開でほとんど途中交代することがなかったし、あれぐらいしか出来ないからね」と照れ臭げに笑った今野だが、決して衝動的に出たアクションではない。
派手なアクションを好まないはずの実直な男を動かすのは、未だに心の片隅に残る6年前の悔恨だ。
移籍1年目に自身にとって3度目となるJ2降格の憂き目を見た2012年。当時はCBを定位置としていた今野が降格直後、涙に暮れながら辛うじて振り絞った言葉がある。
「力が足りないからこういう結果(降格)になってしまった。それを克服したり、カバーしたりする力が自分にはなかった。自分の力不足を感じるし、悔しい気持ちが自分の中で湧いてくる」