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吉田輝星の正面には菊地亮太がいた。
金足農とU18、違いは捕手だった?
posted2018/09/11 16:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Hideki Sugiyama
そこには、甲子園を熱狂させ、日本中の視線を集めた吉田輝星はいなかった。
連覇を逃したU18アジア選手権で、吉田は結果的に2敗を喫した。代表入りして初の実戦登板となった1次ラウンドの韓国戦で、初回に先制3ランを浴びながらも6回を2安打3失点、5奪三振と試合をまとめた。負ければ優勝を逃す剣ヶ峰だったスーパーラウンド初戦の台湾戦では、同点の4回から登板し5回4安打2失点と粘った。
それでも、吉田は勝てなかった。
ボールにスピードはあった。打ち込まれたわけでもなかった。しかし、甲子園で881球もの球数を投げたことによる積み重なった疲労や実戦登板の不足が、事実、吉田を本来の吉田から遠ざけてしまった。
投げれば投げるだけ、その凄味をパフォーマンスに反映できる。夏の甲子園で、どの投手よりもそのことを証明したのが吉田だった。
「キレを意識する」「球速を上げ、低めから浮き上がるボールを投げる」「高めのボール球でも浮き上がるくらい全力で投げる」。今や吉田の代名詞とも言える、3段階のギアを自在に操作するストレート。2回戦の大垣日大まではそれで圧倒しながら、3回戦の横浜戦からは目先を変え、変化球を多投する姿が目立つようになった。
強打者たちを苦しめた「組み立て」。
それは、この試合から吉田と対峙した各校の強打者たちも口を揃えていた。
横浜の4番・万波中正が、敗戦を受け入れがたいような苦笑いを浮かべて言った。
「『ストレートで攻めてくるんだろうな』と思っていたら変化球で攻められた。吉田君もすごかったですけど、どっちかっていうとバッテリーの配球にやられた感じです」
この大会で17打数9安打、2本塁打、12打点と爆発しながら、準々決勝で吉田の前に屈した近江の主砲・北村恵吾も、不完全燃焼とばかりに好投手との対戦を悔やんだ。
「気持ちを出してストレートでぐいぐい押してくると思いましたけど、そこまでではなかったのが意外だったというか。スライダーとか変化球中心で攻められたので自分が打席で読み違えてしまって。バッテリーの配球というか、相手のペースにやられました」
ふたりの言葉で共通していたのは、吉田個人の凄味というより、バッテリーの組み立てに舌を巻いていたことだ。