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トミー・ジョン手術ちょっと待った!
大谷翔平、完全復活へ熟慮すべき。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byUSA TODAY Sports/REUTERS/AFLO
posted2018/09/07 15:00
テキサス・レンジャーズ戦、8回にホームランを打った直後の大谷翔平。
もっと休ませてから復帰させるべきだった!?
最終決断は本人に委ねられており、9月11日(現地時間10日)にビリー・エプラーGMと話し合うことになるので、その場で結論が出る可能性が強い。
ただ、今回は医師の勧めもあり、現地メディアの間ではトミー・ジョン手術に踏み切る可能性が強いという見方が高まっているようだ。
前回のこのコラム(https://number.bunshun.jp/articles/-/831782)でも指摘したように、今回の復帰劇には多少なりとも疑問符が残ったことに変わりはない。
ポストシーズン出場の可能性がほとんど消えた状況の、この時期に大谷の登板に踏み切る必要があったのか。
靭帯損傷の場合、一度傷が入った部位が再生して元通りになることはない。傷や小さな断裂が起こると、その部位と周辺に炎症が起こり、それが痛みと張りの原因になる。炎症を取り除くには、とにかく患部を休ませる以外にないわけだ。
そうして炎症が治まり、リハビリで周囲の筋肉などを鍛えることで患部が補強されると、小さな傷のケースだとそのまま投球ができる状態にまで戻ってくることになる。
PRP療法での治療は、こういう過程を踏むことになるわけだ。
もちろん今回の大谷のケースでは、担当医が慎重に判断して、投手復帰のGOサインが出たわけだが、炎症は休めば休んだだけ確実に収まっていく。だとすれば慎重に慎重を期して、患部に余計なダメージを与えることを避けるために、今季中のピッチングは断念するという判断も選択肢の1つだったと思う。
それと、もう1つ思うことはトミー・ジョン手術に踏み切る決断についてである。
アメリカはすぐに手術をしたがるが……。
「アメリカの場合、手術に対して積極的なところがあって、比較的、軽度なケースでも手術を勧めることが多い」
最近取材した、日本でトミー・ジョン手術を手がけているある医師はこう語っていた。
シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手は、2015年に同じ手術を受けているが、そのときにどうしても今すぐ手術を受けなければならないほどの損傷ではないが「将来のために」と決断したことを明らかにしていた。
そうして'15年3月17日に手術を受け、'16年5月にマウンド復帰という過程を踏んだ。
その後'16年は17試合、'17年はレンジャーズとドジャースで合計31試合に先発し、マウンド復活は果たした。ただ、投球内容は以前の輝きを失い、シカゴ・カブスと契約した今季は8試合に登板したところで、再び肘の故障が発症してシーズンをほぼ棒に振ることになった。
ダルビッシュの今季の故障とトミー・ジョン手術の因果関係は全く分からない。ただ1つだけ言えることは、トミー・ジョン手術によって100%全員が完全復活できるわけではないという、ごく当たり前の事実だ。