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イチローに憧れた少年がMVP候補。
ブルワーズ進撃の中心イエリッチ。
posted2018/09/10 08:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
穏やかな西海岸の夏の午後。刈られたばかりの芝の上で少年たちが歓声を上げながらベースボールに夢中になっている。
やがて、1人の少年が打席に立とうとする。体を微妙にくねらせながら、なんだか自信満々だ。打席に入る直前、グリップを頭の後ろに残しながら大きく弧を描くように、ゆっくりとスイングする。クッ、クッ、クッと膝を閉じて脚の屈伸運動を行う。打席に入って軸足の位置を決め、背筋を伸ばしながら右腕をグルッと回して投手に向け、バットを立てる。
イチロー? いや、違う。少年時代のクリスチャン・イエリッチだ。
「子供の頃は、あの独特の打ち方を真似して遊んだものさ」
ミルウォーキー・ブルワーズのイエリッチ外野手は、そう言って笑う。イチローがメジャー・デビューした2001年、彼はまだ9歳だった。
「いつの日か殿堂入りが確実な選手とプレーするってのは、それだけでもう充分に貴重な経験なんだよ。子供の頃は(デレク・)ジーターに憧れていたんだけど、イチローも同じぐらいリスペクトしていた。そういう選手と一緒にプレーできる日が来るなんて思ってもみなかったことで、マーリンズ時代は本当に特別な時間だった」
3000安打達成の時に同僚だった。
イエリッチは2010年、高卒新人としてドラフト1巡目(23位)指名でマーリンズに入団。マイナーの階段を駆け上がって2013年、21歳の時にメジャーに昇格した。
彼がイチローのチームメイトになったのは2015年、23歳の時だった。もちろん、イチローが2016年、敵地コロラドでのロッキーズ戦でメジャー通算3000安打を達成した時にも同じユニフォームを着ていた。
記録達成の直後、守備に就くためにベンチから外野に向かう2人の後姿の写真はファンの間でよく知られており、イエリッチ自身がそれをインスタグラムに投稿し、こうコメントしている。
「自分が3000安打を達成したイチローと一緒に外野に向かうことになるなんて思いもしないことだった。今年、起こった素晴らしい出来事の1つだし、(記録達成を)この目で見ることができて嬉しく思う」