“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
甲子園で球数制限しない理由は無い!
天才と2番手投手の双方に利点アリ。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/27 08:00
決勝戦の5回裏。マウンドからベンチに戻ってきた吉田輝星。次の6回には、打川和輝にマウンドを譲った。
首都大学Lの球数制限を参考に。
たとえば……。
・先発1戦目は球数制限をしない。
・2戦目は、前日に121球以上投げた場合は、50球までとする。ただし、投球中に50球を超えた場合は、イニング終了まで可とする。
・1戦目で120球以下の場合は、連投を妨げない。
・雨天で1日空けた場合は、制限を設けない。
というのはどうだろう。これは今春から実施されている、首都大学リーグの球数制限ルールである(首都大学野球連盟「投球数ガイドライン」より)。
この球数制限で首都大学リーグの投手がどうなったかというと――複数の好投手が各校に揃うようになった。
日本体育大には今年のドラフト1位候補、東妻勇輔、松本航が並び立ち、3年に吉田大喜、2年に森博人、吉高壮がいる。
春のリーグ優勝校、東海大には4年の飯嶋海斗、青島凌也を筆頭に、3年に原田泰成、2年に小郷賢人、山崎伊織というプロ注目の本格派が控えている。
これが当然の結果かと問われると……それはそうだろう。
投手を成長させるのは試合での経験だ。1人のエースにずっとマウンドを独占されたら、他にいくら好素質の投手がいても芽を出すことは難しいのだから。
高校も複数投手制を広げられるはず。
これは「大学生だからできるのだ」、ということではない。
甲子園の今大会では、準決勝に進出した日大三に140kmを超える投手が4人出現した。
井上広輝(2年)150km、廣澤優(2年)148km、河村唯人(3年)141km、中村奎太(3年)140kmの4人で、井上、廣澤、中村は先発で結果を出し、河村は全試合にリリーフしている。まさに投手4人体制で4強に進出したと言っていい。
日大三は強豪私立だからできるんだと言われたら、あくまでもひとつの事例でしかないので返す言葉がない。しかし吉田の孤軍奮闘が目立った金足農も、決勝の大阪桐蔭戦で吉田が降板した6回以降、三塁を守っていた打川和輝(3年)がマウンドに立っている。
実はその打川も、良いピッチャーだったのだ。