マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園のベスト9を3通り考える。
プロ目線、大学目線、下級生限定。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/24 08:00
根尾昂のあまりに高いポテンシャルは、観る側の想像をかきたてずにはおかない。たとえば新しいポジションでも……。
投手が柿木、吉田でない理由は……。
「投手」は、柿木蓮(大阪桐蔭)でも十分だし、もちろん決勝まで渾身の奮投を続けた吉田輝星(金足農)なら、さらに適役だったかもしれない。
渡辺を選んだのは、“伸びしろ”を買ったからだ。ここはスカウトとしての選択だ。
右肩や下半身の故障が続き、渡辺が主戦格で投げ始めたのは、この夏からだったと言ってよい。にもかかわらず、甲子園でのピッチングには驚いた。
大谷翔平をお手本にしたフォームだという。いい人をお手本にしたと思うし、よくマネができている。軸足に体重を乗せすぎて“沈み”がちょっと気になるが、テークバックと腕の振りの方向性とバランスがすばらしい。
コンスタントに145キロ前後のスピードが出ていたし、右打者にはタテのスライダーを、左打者にはツーシームを、打者の目から遠いポイントに配する緩急。
大阪桐蔭との準々決勝、藤原恭大の内角ぎりぎりを突いた速球の精度は、高校生のレベルをはるかに超えていた。そのベストボールを、ひと振りでライトスタンドに叩き込んでみせた藤原恭大。ただひと言、相手が悪かった。
捕手が目立たなかった大会で選ぶなら。
驚いたのは、「捕手」だろう。
投手をはじめ、各ポジション多士済々だったこの夏の甲子園だったが、唯一心細かったのは捕手に代表的存在が見当たらなかったことだ。
どのスカウトたちの言葉の中にも、「どっかにキャッチャーいませんかね……」と泣きが混ざる。
キャッチャーの中からキャッチャーを探す時代じゃない!
もう10年も前からそう叫んできた。
たいした確信もなく、半端な気持ちで捕手を獲ってくるぐらいなら、身体能力が高くて、野球が上手くて、気の利いた内野手をイチから教えて納得のいく捕手に育てた方が「急がばまわれ」であろう。このままでは日本の野球は、捕手から“崩壊”していくような気がしてならない。
根尾をキャッチャーに育てたい!
実際に、そんなアプローチをしてくる球団が出てくることを祈りつつ、「捕手」にスポーツ天才・根尾昂を挙げた。
中学まで飛騨の山里の生活とスキー回転競技で鍛えた全身のボディーバランスと、足首、ヒザ、股関節の可動域の広さ。さらに持ち前の鉄砲肩と精緻な洞察力。相手チームの狙いを感づいて、弾けるような身のこなしで盗塁を阻止する姿が見えるようだ。
もちろん、すべては本人の意志次第ではあるのだが。