“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昨季不調だった大前元紀が激変!
大宮で復活した“点取り屋”の誇り。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/02 11:15
流通経済大柏時代からゴールへの嗅覚は抜群だった大前元紀。大宮アルディージャのJ1復帰へ、後半戦も得点を量産する。
周囲と連係し、惜しまず走る。
続く第25節のホーム・松本戦。この試合、大前は無得点に終わり、6試合連続ゴールとはならなかった。チームも前半途中で相手に退場者が出て1人多い状況となったが、1-2の逆転負けを喫した。
それでも大前は70分にFWマルセロ・トスカーノとの交代を告げられるまで、相手の脅威になり続けた。相手3バックと3ボランチが中央をこじ開けようと、スペースに顔を出し続ける。その大前にグラウンダーのボールが入ることで大宮はチャンスを作っていた。
36分にFW富山貴光が負傷し、FWロビン・シモヴィッチが投入されると、攻撃はシモヴィッチへのロングボールがメインになった。それでも大前は「ロビンが入ってきたので、上手く段差を作りながら、相手の嫌な場所に常にいることを意識した」と、ロングボール一辺倒にならないように工夫した。
何度も首を振って周囲を確認し、ショートスプリントを繰り返す。それは10人となった松本にとって脅威だった。そして大前がピッチを去って以降、大宮の攻撃は単調となり、勝ち点を落とした。
反町監督からも称えられるほど。
「大前が途中でいなくなって本当に助かった。彼はFKのスペシャリストで最後まで残っていたら……あれだけのFKがあったらやられていたし、彼がいなくなったことで、ボールの出しどころを抑えれば良かった。(10人になってから)ハーフスペースを消すために3ボランチにして、彼の動きを封じようと思った。ただ大前がいなくなってセカンドボールを拾う要員に切り替わって助かった」
これは試合後、松本の反町康治監督のコメントだ。この言葉は大前が効いていたかを証明している。大前本人も敗戦を悔しがると同時に、手応えを掴んでいた。
「前半、バラ(茨田陽生)から1本、裏のスペースに出してくれたパスがありました。結果としては上手く合わなかったけど、すごく手応えのあるプレーだった。バラは常に俺の動きを見てくれているし、俺もバラを見ていて、ボールを持ったらどこにパスが出るかを感覚的に分かっている。
だから、あのパスが俺に出てきた。瞬間的な感覚が合ってきたことが、点を獲れている要因だと思います。自分が欲しい場所に要求したらボールが来る。それは大きなプラスですね」