“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昨季不調だった大前元紀が激変!
大宮で復活した“点取り屋”の誇り。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/02 11:15
流通経済大柏時代からゴールへの嗅覚は抜群だった大前元紀。大宮アルディージャのJ1復帰へ、後半戦も得点を量産する。
やりたいプレーを伝えられている。
この言葉を結果で示したのは翌26節のホーム・ロアッソ熊本戦でのこと。1-1の同点で迎えた70分、ハーフライン付近右サイドに開いた茨田にパスが渡る。次の瞬間、茨田からゴール前にロングスルーパスが送り込まれた。
そこには相手最終ライン裏を狙って猛然と走り込んでいた大前がいた。大前はボールを足下にピタリと収め、飛び出してきたGKと1対1になると、チップ気味のシュート。これがゴール左隅に吸い込まれ、大宮が逆転。大前にとっての今季16得点目が決勝ゴールとなった。
「今は自分のやりたいプレーを上手く周囲に伝えられている。石井(正忠)監督に使ってもらっているのが一番だし、その中でチャンスもあるけど、毎試合何回もあるわけではない。だからこそ1回、2回のチャンスをいかに着実にゴールに繋げられるか。そこで決められているのが大きい」
彼のキャリアハイは清水時代にJ2でマークした18ゴール。すでに残り16試合時点であと2ゴールのところまで迫っている。昨シーズン苦しみ抜いた“点取り屋”は初心に返ったことで、これまでの積み重ねを実証するペースでゴールを挙げている。
「もっと俺が点を獲らないと、チームは勝てないと思います。今年はまだ1試合で2、3ゴールを奪っていない。コンスタントに点が獲れていることは良いことだけど、やっぱりもっと守備を楽にさせないといけない」
昇格したときに得点ランクが上なら。
背番号10に輝きが戻って来た。ゴールを量産しても決して浮かれない男は、不動のエースストライカーとしての矜持を口にした。
「毎年、毎年ゼロから始まるので、コツコツとやるだけなんです。今年は昨年迷惑をかけた分、もっと点を獲りたいし、J1昇格を果たしたときに、自分の得点ランキングが上になっていれば良いなと思っています。辛いシーズンを経験した分、今年に懸ける思いは強い。やるしかないと思っています」
チームを勝利に導くゴールの量産を。彼の頭の中にはキャリアハイの得点数など頭にはない。
頭にあるのは、清水の時のようにチームをJ1に戻すことのみだ。