炎の一筆入魂BACK NUMBER
16日ぶりにプロ野球が帰ってきた。
カープは広島の希望になるべく戦う。
posted2018/07/23 17:00

巨人3連戦はいずれも劇的な展開で3連勝。最短で27日にも3連覇への優勝マジックが点灯する。
text by

前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
広島に熱狂が戻ってきた。7月20日、マツダスタジアムで巨人戦が行われた。16日ぶりとなったプロ野球に、満員のスタンドは赤く染まり、そして揺れた。
戻りつつある日常を感じながらも、決して忘れてはいけないものがある。試合前には両チームの選手が義援金の募金活動を行い、半旗が掲げられる中で両チームのファンは鳴り物の応援を自粛した。広島のテレビにはまだ「豪雨災害情報」が随時流れている。何より、バックスクリーン左に望む、青々とした山の山頂付近にむき出しとなった土色がその爪痕を物語る。
2週間前、広島は歴史的な豪雨に見舞われた。土砂が崩れ、川が氾濫。家や車が流され、道路や鉄道も寸断された。広島ナインは、この日と同じ巨人との3連戦を東京ドームで戦っていた。
ADVERTISEMENT
広島球団は、すでに完売だった9日からの阪神3連戦の中止を決断。東京では全体像がはっきりと見えていなかった選手たちも、広島に戻るとがくぜんとし、言葉を失った。
「野球で元気をとよく言うけれど、そういう時期じゃない」と、広島出身の新井貴浩はかぶりを振った。新井は東日本大震災が起きた2011年のプロ野球選手会会長で、開幕を強行しようとするセ・リーグに開幕延期を訴え続けたこともあるだけに、経営側の球団の決断に理解というよりも、感謝しているようだった。
ラジオから流れる野球の実況に……。
広島はまだ悲しみに覆われている。不明者の捜索はなおも続き、ニュースに胸が締め付けられる。ただ、立ち止まることも許されない。被災地は徐々に復興へ向かおうとしている。
そしてプロ野球も再開する。オールスター休みを挟み迎えた後半戦。8日ぶりに広島戦が行われた16日の中日戦(ナゴヤドーム)は、ラジオから流れる丸佳浩の本塁打の実況やクリス・ジョンソンの力投の実況に、被災した人たちは思わず喜びの声を上げたと聞く。