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フランス代表の黄金時代、始まる――。
クロアチアに勝った“ディテール”とは? 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2018/07/16 11:30

フランス代表の黄金時代、始まる――。クロアチアに勝った“ディテール”とは?<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

近年稀に見るエキサイティングな決勝戦だった。と同時に、決勝戦の勝敗にまでVARが大きく影響した、歴史的な試合ともなった。

サプライズの連続だったロシア大会だが……。

 ロシアW杯はサプライズ続きの大会だった。

 大陸予選でイタリアとオランダが敗れ、グループリーグで前回王者ドイツが散った。決勝トーナメント1回戦では、アルゼンチンとポルトガルが敗者に加わった。ベスト8ではブラジルの歩みが止まった。優勝候補と見なされるチームがここまで上位進出を阻まれたのは、いったいいつ以来だろう。

 ならば、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウド、それにネイマールがベスト4を待たずに姿を消した大会は、面白みを欠いてしまったのか。

 否、そうではない。

称えるべきベルギー、イングランド、クロアチア。

'86年以来のベスト4入りを果たしたベルギーは、傑出した個を揃えつつも組織としての成熟度を高めた好チームだった。芸術的とも言えるカウンターは日本の夢を打ち砕いただけでなく、サッカー王国ブラジルをも沈めた。主将エデン・アザールとその仲間たちは、世界のトップ3にふさわしいクオリティを備えていた。

 そのベルギーに3位決定戦で敗れたイングランドは、世代交代を成功させながら'90年大会以来のベスト4に食い込んだ。ブラジルW杯当時のフランスを彷彿とさせるチームは、4年後のさらなる飛躍を予感させる。

 史上初のファイナリストとなったクロアチアの歩みは、彼らに無関心だった者の心さえも動かしたのではないか。

 おそらくは最後のW杯となるルカ・モドリッチの世代が結束し、戦術論や技術論だけでは語れない誇り高き戦いを繰り広げた。後半の巻き返しを得意のパターンとしたのは、不屈のメンタリティを示すものだっただろう。

 ルジニキ・スタジアムを二度目の戴冠式の舞台としたフランスは、優勝候補のひとつに数えられていた。ただ、優勝候補の最右翼ではなかった。

【次ページ】 ロシア大会の結末としてふさわしい優勝。

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