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栗山監督が、ポーランド戦の西野采配
に共鳴した。覚悟が宿った決断とは。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/07/06 17:00
日本ハムでの6年間で2度のリーグ優勝を果たしている栗山監督。今シーズンも7月5日現在、首位と2ゲーム差の2位につけている。
栗山監督は敗色濃厚の一戦で……。
フラッシュバックした一戦がある。
その日本代表戦の1日前、6月27日福岡ソフトバンクホークス戦。沖縄セルラースタジアム那覇で、今シーズン唯一のサヨナラ勝ちを収めていた。9回まで無得点で、2点のビハインドを背負っていた。9回裏の攻撃を残して0-2。身内から見ても、明らかに敗色濃厚の展開だったのである。
9回1死からアルシア選手がソロ本塁打を放つ。まず1点差としたが、無走者で、少しだけ機運が上昇した程度である。続くレアード選手が三振を喫して2死。しかしそこから横尾選手が単打、鶴岡選手が死球で、2死一、二塁になった。一打同点、長打ならばサヨナラ勝ちの夢を描ける場面へとなったのだ。
9番で途中出場していた太田賢選手に打席が回る。栗山監督は一塁ベンチを飛び出すと、球審に代打田中賢選手を告げたのである。好機で、信頼を置くベテランのバットマンを投入した。至極当然の策に映るが、状況としては躊躇してもおかしくなかった。
この時点で、ベンチに残っている野手は捕手の清水選手1人だった。栗山監督は試合を動かすため8回から代打などで、次々と野手を投入していた。太田選手を交代させたことで、遊撃を専門とする、または安心して任せられる選手が皆無となったのである。
「野手を1人残しておくのは違うと思う」
栗山監督のアクションにも、覚悟がにじんでいた。
「延長に入ってから、守る人がいないからって(捕手以外の)野手を1人残しておくというのは違うと思うんだよね。代わりがきかない捕手は、ちょっと違うけれどね。ベンチ入りの野手が最終的にいなくなってコールド負けでもいいんだ。まず同点に追いつかないと、何も前に進まない。高校とかで、内野を守っていた選手だっているんだからさ」
その執念に呼応するかのように、田中賢選手が同点打を放った。振り出しに戻すと、続くリードオフマンの西川選手がガッツポーズとともに四球を選び、満塁へとチャンスメークした。そして大田泰選手が、サヨナラ押し出し四球を選んだのである。劇的な1勝へと、つながったのだ。