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控え中心でもこれほど強いとは!
盤石のベルギーに日本の勝機は?
posted2018/06/29 11:20
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
主戦級を温存しながら、これほどのクオリティーを保てるとは──。
グループステージの最後に組まれたベルギーとイングランドの好カードは、首位通過だけを賭けたものとなり、ベルギーは前戦から先発を9人、イングランドは8人変更した。それでもカリーニングラードのピッチ上では、スピーディーでエキサイティングな攻防が繰り広げられた。
およそ2時間前には、退屈にすぎる緩慢な終わり方の試合があった。チケット代を払った観客ならば、ヒステリックな指笛とブーイングは当然の反応だ。ボルゴグラードでポーランドに敗れながらも、決勝トーナメントに駒を進めた日本。ラウンド16の相手は、そこから北西に約1700キロ離れた飛び地で、トップレベルのせめぎ合いを制したベルギーに決まった。
ガレス・サウスゲイト監督のもとでポゼッションスタイルに舵を切ったイングランドは、若い才能が揃う魅力的なチームに生まれ変わっている。
長年FA(イングランド協会)の仕事に携わってきた知的な指揮官は、フットボールの母国のステレオタイプを変えようとし、U-21代表の指揮官を経て現職に。欧州予選こそ堅実に勝ち上がってきたが、その後にスティーブ・ホランドという優れた参謀の助言もあり、3バックを導入してスリーライオンズを自発的な集団に変貌させている。
近未来の大黒柱、21歳のティーレマンス。
とはいえ、似たようなプレースタイルでも相手との差は如実に現れた。成長の途上にあるイングランドと、黄金世代の集大成となるベルギー。熟成度の違いは明らかだった。
その最たるものは、パスワークのリズムにある。つなぐフットボールに取り組み始めて日が浅いイングランドは、ボール回しが単調になりがちだ。かたや戦術家ロベルト・マルティネスのもと、長い試行錯誤を重ねて今に至るベルギーは、時に相手をいなし、時にダイレクトを交え、時に大胆な選択を敢行してゴールを目指していく。
この試合では、近未来の大黒柱と謳われるセントラルMFの大器、ユーリ・ティーレマンスがW杯初先発にも臆することなく、堂々とテンポをコントロールした。この21歳はファビアン・デルフ、エリック・ダイアーというプレミアリーグのトップクラブでレギュラーを張る相手を向こうに回しながら、多くの時間帯で優位に立っていた。