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メッシに笑顔と切れ味が戻った!
「アルゼンチン人でいるのは最高」 

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藤坂ガルシア千鶴

藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia

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photograph byGetty Images

posted2018/06/27 17:30

メッシに笑顔と切れ味が戻った!「アルゼンチン人でいるのは最高」<Number Web> photograph by Getty Images

世界最高の選手がワールドカップから早々に消える危機は回避された。アルゼンチンは息を吹き返すことができるのだろうか。

クロアチア戦の先発は直前までいじられた。

 メッシがあれほど動揺していた理由のひとつは、クロアチア戦の先発布陣にある。

 ホルヘ・サンパオリ監督が率いたチームは、過去1度も11人が揃ってプレーしたことのないメンバーで構成されていた。さらに、直前の練習で先発組でプレーしていた選手が外れてもいた。

 システムは、守備陣が「慣れない形」と称した3バック。大会が始まってからも変更に変更を重ね、いつまでも迷い続けるだけでベースとなるプランを見出せない指揮官に困惑していたのだ。

 メッシ自身も、初戦でアイスランドに引き分けた悔しさを引きずっていた。タイムアップの瞬間、ボールを力いっぱい蹴り上げ、フラストレーションを露わにした。険しい表情でキャプテンマークを外し、ミックスゾーンでは「責任はすべて自分にある」と断言。自分がPKを失敗していなければ勝てたという、罪の意識にさいなまれていたのだ。

選手を守るのは監督の役目だが……。

 選手がそうした心境に陥っているとき、重要な役目を果たすのが監督である。しかし、ウルグアイのオスカル・タバレス監督が前回のブラジル大会で追放処分となったルイス・スアレスを、コロンビアのホセ・ペケルマン監督が今大会の日本戦でハンドによってPKを与えたカルロス・サンチェスを、まるで本当の父親のように温かく説得力のある言葉で励まし、毅然とした態度で外部の「攻撃」から選手を守ったようなことは、アルゼンチンでは起こらなかった。

 サンパオリはメッシの重荷を下せなかった。あるいは、戦術や采配を巡りチーム内での立場が微妙なものになっていたため、どんな対応をしていても、メッシの心理的な改善を促す効果はなかったかもしれない。

 アルゼンチン代表監督に就任してから、サンパオリは常にメンバーと戦術を試し、W杯直前のキャンプでもそれは変わらなかった。そんな監督に対して選手たちは徐々に信頼を失い、その関係はクロアチア戦を前にして冷え切っていた。そして、敗戦を機に亀裂はさらに深まっていたのである。

【次ページ】 「アルゼンチン人であることほど素晴らしいことはない」

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