ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
ロナウドの運動量と支配率の反比例。
薄氷のポルトガルこそW杯の面白さ。
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2018/06/26 14:30
メッシに続いてクリスティアーノ・ロナウドもPK失敗。軒並み強豪が苦しむからこそ、今大会は面白い。
鮮やかな右足アウトサイドシュート。
前半終了間際の先制点は、まさにこの選手たちが絡んだ見事なゴールだった。左サイドからドリブルで中央に入ってきたアンドレ・シウバからのボールは、セドリクを経由して右サイドのクアレスマへ。
その後アンドレ・シウバとのワンツーを完成させたクアレスマは、ボックス際から思い切って右足を振るう。右足アウトにかけて美しい弧を描く弾道が、ニアサイドではなくゴール左上へと吸い込まれていった。ファーサイドでDFを引きつけていたC・ロナウドが、うれしそうにクアレスマの首に腕を回した。
ここまでの2試合で、実際の走行距離ほどには動いていない印象が強かったC・ロナウドだが、うまくチームプレーを形成して、リードして試合を折り返すことに成功した。
だが、やはりこのチームの浮沈を握るのはこの男なのかもしれない。エースのベクトルが下向くと、ポルトガルの調子がおかしくなっていった。
PK失敗した後にはVARの「お世話」に。
きっかけは、53分のPKか。自ら奪ったファウルはVARの末に認められたが、落ち着いて蹴ったはずのボールはイランGKアリレザ・ベイランバンドにセーブされた。
83分には、またもVARの「お世話」になった。ボールのない場面での競り合いで相手DFの顔に肘を入れたとして、ビデオ判定の末にイエローカードを頂戴した。イランのカルロス・ケイロス監督は「レッドカードもの」と、同胞に対しても試合後も怒りが収まらなかった。
ただし、試合はC・ロナウドの失敗で盛り下がったわけではない。イランが盛り上げたのだ。
横への動き直しなど細かな動きは不得手かもしれないが、イランの前へと出る際の迫力は、モロッコ相手の初戦から示されていた。
少ないチャンスで1トップのサルダル・アズムンに絡もうと、オランダリーグ得点王のアリレザ・ジャハンバフシュは前半からカウンターに快足を飛ばしていた。追う展開で攻撃的なカードを切れば、さらに勢いは増す。こちらはVARにも諮られなかったが、74分にはアズムンの折り返しに走り込んだメフディ・タレミが倒される場面もあった。