松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹はコース環境を批判しない。
全米最終日の「-4」を生んだ戦意。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/06/18 12:45
3日目まで苦しいゴルフを強いられながらも、最終日で挽回した松山英樹。それでもその背中からは満足気な様子はない。
土台が固められなかった悔しさ。
技術に対する確固たる自信、技術に裏打ちされた土台が固まっていなかったからこそ、4パットがきっかけとなって全体が揺らぎ、79を喫した。
それは、全米オープンが迫っていた5月ごろ、松山がずっと懸念していた崩れ方そのものだった。「自信がないまま打っている感じがする」、「いいショットを打っても、なぜ打てたのか、確信が持てない」と彼は何度も何度も言っていた。
たまたまではダメだ。いつ何時もグッドショットが繰り返し打てるようにしなければ、脆弱なゴルフになってしまう。それを痛感していながら、解消することができぬまま、彼は全米オープンを迎え、そして懸念していた通り、脆く崩れた。
「やりたいことが何もできなかったのが一番悔しい」
彼の悔しさは、4パットのみならず、79を喫した3日目のみならず、全米オープンのみならず。マスターズ後に固めるはずだった土台が何ひとつ固められなかったという悔しさだった。
コースを批判する姿勢は皆無だった。
メジャーで勝つために、足りないものは何なのか。松山が言ってきた通り、「しっかりしたもの」を作ることがマスト(must)なのだとすれば、今、彼はそのプロセスのどのあたりに立っているのか。
それとも、すでに到達点の至近距離まで来ており、あとは安定性、継続性を上げることが課題なのか。
そう問いかけると、松山は数秒間、考えていた。答えを見い出そうと努力していたが、絞り出した答えは、こうなった。
「うーん……説明を自分自身ができないんで……答えようがないです」
ショットがいいのか悪いのか「わからない」。自分のゴルフ全体を向上させるために何が一番必要かも「わからない」。全米オープン4日間を終えたとき、松山はいまなおトンネルの中にいる。
しかし、そこから出られないのかと問われたら、松山は脱出のための糧になるものを備えているから、きっと自力で這い出すだろうと私は答えたい。
あれだけ批判が続出し、松山自身も2度の4パットを喫した3日目でさえ、松山は「みな同じ条件でやっている」と言い、コースを批判する姿勢は皆無だった。