松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹はコース環境を批判しない。
全米最終日の「-4」を生んだ戦意。
posted2018/06/18 12:45
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
全米オープン最終日。松山英樹は午前9時27分という早いスタートを迎えていた。
前日に9オーバーとスコアを落とし、54位へ後退。すでに首位から11打も離されていたが、それでも彼は「バーディーを取りたい」と前を向いていた。
3日目のシネコックヒルズは日照りと強風でコースコンディション、とりわけグリーンが「プレー不能」と批判が殺到。大会を主催するUSGA(全米ゴルフ協会)は「天候の変化は予測不可能なものだった」と前置きした上で、最終日のプレー開始前にグリーンに大量の水を撒いた。
湿気を含んだ最終日早朝のグリーンに挑み始めた松山は、出だしこそ「結構オーバーしたので、びっくりした」が、「柔らかくはなっていたけど、スピードはあまり変わってない。(グリーン面が)きれいだったので転がりもきれい」とすぐさま状況を把握し、3番からは4ホール連続のバーディーラッシュで波に乗り始めた。
振り返れば、松山は2011年マスターズに初出場して以来、奇跡のような大挽回や大逆転を米ツアーや世界の舞台で間近で何度も目撃した。そして松山自身、そういう戦い方をやってのけた経験がある。
だからこそ、最終日の前半のバーディーラッシュを後半も続けられれば、リーダーボードを駆け上っていくチャンスはまだある――彼は、そう信じていたのだと思う。
そうでなければ、次々にバーディーを奪えるだけの集中力を維持できるはずはない。たとえ早朝7組目の早いスタートになろうとも、コースコンディションがどうであろうとも、松山はただただ一縷の望みを抱いて戦っていた。
ホールアウトした姿からはやるせなさが。
しかし、その勢いと流れは前半だけで途絶え、右ラフにつかまった14番でボギーを喫すると、15番ではアイアンでティショットを打ち放った直後、ボールはフェアウエイに留まったものの、彼は苛立ちを露わにした。
最後の力を振り絞ろうと挑んだ上がり3ホール。16番(パー5)は6メートルを沈めてバーディーを奪ったが、17番は3メートルほどのチャンスを逃し、パーに甘んじた。
72ホール目の18番。グリーン右手前からの第3打はチップインしそうなほど見事な寄せだった。最後の最後まで諦めず、手を抜かず、1打1打、丁寧に。
そんな松山からはアスリートとしてのネバーギブアップのスピリッツが感じられ、健気な姿ではあった。が、優勝争いの蚊帳の外に置かれて72ホール目をホールアウトした姿からは、彼のやるせなさが漂ってきた。