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「脱・なんちゃってプレス」成功。
前線の運動量がW杯を戦う武器だ。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byGetty Images
posted2018/06/16 17:00
前線で守備のスイッチを入れる存在として、岡崎慎司はやはり頭1つ抜けている。西野監督の決断や、いかに。
前線のプレスがなければ、ラインは上がらない。
だからドン引きは論外だが、深追いも危険だ。ガーナ戦やスイス戦では前線のプレスがいかにも中途半端で、中盤の選手にやすやすとボールをつながれ、そこから一発でラインの裏を狙われるシーンもあった。
ボールホルダーに圧力がかからない「プレスレス」の状態では守備陣はラインを上げられない。そうかと言って、十分な訓練を積まないままオフサイドトラップでやり過ごすのは、あまりにもリスクが大きすぎる。
深追いも引きすぎもせず、ミドルゾーンでコンパクトなブロックを保つためには、後ろと巧みに連動する前線のプレスが不可欠だ。パラグアイ戦における最大の収穫は、そこに改善の跡が見られたことだろう。
コロンビアに通用するか、は別の話。
とりわけ岡崎慎司と香川真司のファーストディフェンスが効いていた。どこに、どうやってボールホルダーを追い込むか。盛んに首を振り、敵味方の位置取りを確認しながら、それを実践している。スイス戦までの「なんちゃってプレス」とはモノが違った。
前線の2人がパスコースを限定したことで、乾と武藤嘉紀の両翼に加え、柴崎と山口蛍の両ボランチも効率よくインターセプトを狙うことができた。元来、連動した守備とは、こういうことを指すのだろう。
セカンドボールの回収も含め、中盤で攻守の局面をひっくり返すシーンが増え、攻撃もスムーズに運んでいる。パラグアイの面々が明らかに後手に回ったからだ。象徴的なのは4点目。香川と山口が前後から挟んで横パスを誘発し、それを柴崎が奪う連動したプレスが香川のゴールにつながっている。
良い攻撃は、良い守備から生まれる――という格好の見本だったか。もっとも、パラグアイ戦で機能した守備がコロンビアにも通用するかどうかはまた、別の話だ。
中盤の構成も、アンカーを据えたパラグアイのそれとは違っている。ボランチは2枚。当然、プレスのハメ方も変わってくるはずだ。
個々のスキルやレベルも違う。寄せ手をかわす力量(技術やアイディア)はコロンビアが数段上手と見て間違いない。次々とマークをはがされ、自陣深く押し込まれるケースを覚悟しておかなければならないだろう。