ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
「脱・なんちゃってプレス」成功。
前線の運動量がW杯を戦う武器だ。
posted2018/06/16 17:00
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
Getty Images
スタンドでコロンビアの「スパイ」が忙しくペンを走らせる。日本とパラグアイの一戦を偵察に来ていたカンビアッソ(元アルゼンチン代表のMF)のことだ。
メモの中身は知る由もないが、日本の強みも弱みも「丸裸」にされているのは確かだろう。スコアは4-2。久々のゴールラッシュに沸いた反面、初戦でぶつかるコロンビアが日本を舐めてかかることもなくなった――と考えれば、手放しで喜べるはずもない。
日本に勝利をもたらした乾貴士も、この日の鮮やかな2ゴールと引き換えに、本番では厳しいマークに遭うだろう。香川真司や柴崎岳にも同じことが言えるのではないか。
そもそも、本大会に向けて最も問われているのは守備力だろう。失点を2つも喫したのは、壮行試合のガーナ戦やスイス戦と同じ。しかも、先に失点しているのが悩ましい。
先制されたら、ほぼ勝ち目はないだろう。過去5大会で先に失点して勝った試合は1つもない。ドローに持ち込めたのも2002年が日韓大会のベルギー戦だけである。
先に失点しようものなら、相手にがっちり守られ、鋭いカウンターアタックを浴びるのがオチだ。コロンビアばかりか、セネガルやポーランドも、そうした戦い方を得意としている。日本は傷口を広げる一方だろう。
「崩されたわけではない」は無意味。
パラグアイ戦を含む3つの準備試合ではっきりしたのは、守備の局面で深追いしすぎても、後ろに引きすぎてもダメだということ。前者は後ろ(中盤や最終ライン)がついていけずにコンパクトなブロックを保てず、後者はセカンドボールを拾われ、強引にゴールをこじ開けられてしまう。
パラグアイ戦の2失点は、いずれもボックス内に味方の人数がそろっていたにもかかわらず、一撃でゴールをぶち抜かれた。この手の失点を「崩されたわけではない」と指摘する指導者もいるが、敵の守備組織を完全に崩さずとも点を取るのがワールドクラスだ。列強相手には「事故」でも何でもない。