酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イチローは盗塁記録もやっぱり別格。
伝説に残る強肩捕手との一騎打ち。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byAFLO
posted2018/06/16 11:30
'06年には39連続盗塁成功をマークしたイチロー。ヒットで出れば次の塁を狙う、理想的なリードオフマンだ。
出塁、二盗、三盗、ホームインの離れ業。
イチローの「足」を象徴するのが、「出塁して二盗、三盗、ホームイン」というプレーだ。
今シーズンの5月20日、大谷翔平が先発したエンゼルス対レイズでのこと。僚友のマイク・トラウトは5回裏、先頭打者として四球で出塁し、二盗、三盗してザック・コザートの犠飛で帰ってきた。文字通り足で稼いで得点を挙げたのだ。トラウトが今のMLBで最も優秀な選手だと言われるのは、大きいのを打つだけではなく、こういう芸当もできるからだ。
ちなみに全盛期のイチローはこの「一、二、三、帰ってくる」が大の得意だった。特に初回にこれをやられると相手のダメージは大きい。イチローのキャリアでは5試合あった。
<マリナーズ時代>
'01年5月17日ホワイトソックス戦:安打で出塁、二盗、三盗、1死後マルチネスの安打で得点。
'01年8月29日デビルレイズ戦:安打で出塁、二盗、三盗、三盗の際の捕手悪送球で得点
'03年6月8日メッツ戦:ダブルヘッダー1試合目。安打で出塁、二盗、三盗、ブーンの二塁打で得点。
'11年7月22日レッドソックス戦:安打で出塁、二盗、三盗、アクリーの安打で得点。
<マーリンズ時代>
2015年5月3日フィリーズ戦:四球で出塁、二盗、三盗、スタントンの犠飛で得点。
1回ではなく試合途中の先頭打者のケースや、盗塁以外で進塁したケースなど、類似の展開で得点した事例を含めれば、20試合を優に超える。そして'15年と言えばイチローは41歳。この年齢で「一、二、三、帰ってくる」をするとは驚異的だ。イチローは単に安打をたくさん打っただけではなく、塁に出れば非常に危険な存在になって、チーム、相手投手を脅かしたのだ。
21世紀の名捕手を“お客さん”に。
もう1つ、イチローの盗塁にまつわることを書いておく。それは2歳年長の名捕手、イヴァン・ロドリゲスとの「一騎打ち」だ。イチローと盗塁企図数10回以上の捕手との対戦成績はこうなっている。
<盗塁成功率順>
マイク・ナポリ 100.0%(14盗0死)
ジェイソン・バリテック 95.7%(22盗1死)
ジョシュ・バード 92.3%(12盗1死)
AJ・ピアジンスキー 90.5%(19盗2死)
ベンジー・モリーナ 87.0%(20盗3死)
ジャロッド・サルタラマキア 84.2%(16盗3死)
ダグ・ミラベリ 83.3%(10盗2死)
ジェフ・マシス 83.3%(10盗2死)
ジョー・マウアー 81.8%(9盗2死)
ジェラルド・レアード 80.0%(12盗3死)
ジョン・フラハーティ 80.0%(8盗2死)
カート・スズキ 79.2%(19盗5死)
ホルヘ・ポサダ 76.9%(10盗3死)
ラモン・ヘルナンデス 76.5%(13盗4死)
ロッド・バラハス 75.0%(9盗3死)
ホセ・モリーナ 59.1%(13盗9死)
イヴァン・ロドリゲス 50.0%(6盗6死)
ア・リーグを中心に21世紀の名捕手が並ぶ。マイク・ナポリは通算267本塁打を誇る強打の捕手だが、イチローには走られ放題だった。バリテックと言えば左胸にCのキャプテンマークを付けたレッドソックスのチームリーダー。松坂大輔を好リードしたのが記憶に新しいが弱肩で、イチローにはお客さんになった。