酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イチローは盗塁記録もやっぱり別格。
伝説に残る強肩捕手との一騎打ち。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byAFLO
posted2018/06/16 11:30
'06年には39連続盗塁成功をマークしたイチロー。ヒットで出れば次の塁を狙う、理想的なリードオフマンだ。
必然性がなければ走らない矜持。
2人の「思想」は、盗塁成功率に現れている。
福本豊 1065盗塁299盗塁死 成功率.781
広瀬叔功 596盗塁123盗塁死 成功率.829
福本と広瀬は、NPBの盗塁数1位と2位だ。広瀬は盗塁数では福本とは大差が開いているが、300盗塁以上の選手での成功率は1位、福本の成功率は6位だ。もちろん福本の成功率も低くはないが、盗塁数を稼ぐために確実性を多少犠牲にした印象は否めない。
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では、イチローはどちらの考え方なのか?
<イチローの日米盗塁数>
NPB 199盗塁 33盗塁死 成功率.858
MLB 509盗塁117盗塁死 成功率.813
イチローは走れば80%以上の極めて高い成功率で塁を奪っていた。広瀬叔功と同様「必然性のある状況で」のみ確実に盗塁したのだ。イチローは日米ともに、1度しか盗塁王のタイトルを取っていない。ここに「必然性がなければ走らない」彼の矜持を感じる。
イチローが盗塁すると勝率が上がる。
「イチローが盗塁をすれば、白星が近くなる」
それはMLBのデータを見ればはっきりわかる。イチローはMLBで2651試合に出場したが、その勝敗は、1288勝1363敗、勝率.486。マリナーズ、マーリンズに在籍期間が多かったこともあり、負け試合の方が多かった。
しかしイチローが盗塁をした試合では、238勝184敗、勝率.564となる。これは安打を打った試合の956勝904敗、勝率.514よりもかなり高い。さらに2盗塁以上すると36勝19敗、勝率.655と跳ね上がる。この数字からイチローは「勝利のために走った」と言えるのではないか。