酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イチローは盗塁記録もやっぱり別格。
伝説に残る強肩捕手との一騎打ち。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byAFLO
posted2018/06/16 11:30
'06年には39連続盗塁成功をマークしたイチロー。ヒットで出れば次の塁を狙う、理想的なリードオフマンだ。
バーランダー相手でも盗塁成功。
'08年、そんな「足の全盛期」のイチローをイヴァン・ロドリゲスは2回も刺している。
この年、4月24日のオリオールズ戦の1回に四球で出塁してラモン・ヘルナンデスに二塁で刺されたイチローは、以後15回連続で盗塁成功。しかし5月20日のタイガース戦の1回に中前打で出て、イヴァン・ロドリゲスに二塁で刺された。
イヴァン・ロドリゲスは先発ジャスティン・バーランダーと示し合わせて剛速球を投げさせ、イチローを封殺したのだ。しかしイチローも負けてはいない。6回に遊撃内野安打で出塁すると、二死後、このバッテリーから盗塁を奪っている。
イチローはここから14回連続で盗塁成功すると、7月6日に再びイヴァン・ロドリゲスのタイガースと対戦。この試合は延長15回という死闘になったが、イチローは延長13回1死から四球で歩くと、二塁に走った。しかしイヴァン・ロドリゲスはまたイチローを刺した。まさに決勝点をめぐる必死の攻防だったのだ。ちなみにこのとき打席に立っていたのは現DeNAのホセ・ロペスだった。
イヴァン・ロドリゲスとイチローの対決はこれが最後になった。
彼はこの年7月30日にヤンキースに移籍、アストロズ、レンジャーズ、ナショナルズとチームを変わり'12年4月に引退を表明。'17年にはMLBの野球殿堂入りを果たしている。
イチローは「記録に残る男」と言われるが、その記録ひとつひとつには「野球のドラマ」が紐づけされている。イヴァン・ロドリゲスの「肩」とイチローの「足」をめぐるドラマは、その中でもとびきり濃密で、血沸き肉躍るものだった。
改めてその美しい「韋駄天ぶり」に感謝。