“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ゴールデンコンビが出会って10年。
香川真司&乾貴士はW杯で再び輝く。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJFA/AFLO
posted2018/06/17 11:30
セレッソ大阪から世界へと羽ばたいた香川真司(左)と乾貴士。10年の時を経て日本の救世主となるか。
真司のいる1部に少しでも早く行きたい。
ドルトムントとボーフム。距離こそ近いが、ドルトムントはブンデス1部で優勝を争うチーム。一方でボーフムは2部だった。
「真司が輝いているときに、俺は2部で残留争いをしていた。正直『この移籍は正解だったのかな』と疑問に思ったこともあった。でも『早く真司がいる1部に行かないと』と思って、自分のパフォーマンス、モチベーションを落とさないで日々を過ごした」と語ったように、リーグ30試合出場7ゴール。この活躍が認められ、'12年6月に1部のフランクフルトに完全移籍。“個人昇格”を果たした。
しかし、香川は同時期にイングランドの名門マンチェスター・ユナイテッドに移籍し、ブンデスリーガ1部での対決はかなわなかった。
その2年後、に香川がドルトムントに復帰し、2人は同じリーグでプレーすることになったが、'15年8月に乾は小さい頃からの憧れだったリーガ・エスパニョーラのエイバルに完全移籍。またも2人は離ればなれになった。
そして月日が流れ、2人は日本代表に定着。ロシアW杯のメンバーに名を連ねた。
“極上の会話”に加わった老獪さ。
話をパラグアイ戦に戻そう。香川は29歳、乾は30歳とベテランの領域に入った2人の“極上の会話”には、老獪さが加わっていた。柴崎岳の縦パスや両サイドバックの攻撃参加を巧みに引き出しながら、自らもゴールを狙い続けた。その姿を見て、香川がこう話していたことを思い出した。
「常にイメージを持ちながらプレーすることは、サッカー選手として必要なこと。常に考えることで、違った部分のイメージに波及していくと思うんです。例えば、パスをちょっと右斜め前に出したら、相手も右に寄る。僕がさらに右側に動くことで、左側がよりフリーになるわけじゃないですか。そこで僕にボールを落としてもらって、左にパスを通せば、味方がフリーになってチャンスになる。
1つイメージすることで、2つ3つ先のイメージも広げて考えられる。それができる乾のような選手が味方にいれば、イメージはさらに広がっていくんです。当然、すべてがうまく行くわけではないので、何度もトライをしながら、イメージを膨らませていく。これが重要だし、凄く楽しいんです」
言葉が要らない2人の世界。もちろん他の選手を寄せつけないわけでなく、巻き込む力を持っている。だからこそ、2人がピッチに立てば攻撃に輝きを増す。この“ゴールデンコンビ”をセットで使わない手がない。
2人が放つ1つの光。この光はロシアW杯で、日本代表をどう照らしていくのだろうか。西野監督の決断やいかに――。