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日本にはスポーツの教え方がない?
大学生が作った「指導法の勉強会」。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2018/06/14 07:30

日本にはスポーツの教え方がない?大学生が作った「指導法の勉強会」。<Number Web> photograph by Getty Images

イチローの同僚として日本でも有名なロビンソン・カノも、ドミニカが生んだスーパースターの1人だ。

なぜスポーツは目の前の結果に固執する?

 阪長氏は、両国の文化・経済事情を紹介したうえで、日本の異質性をこう訴えた。

「私たち日本人は教育をしっかり受けている人口が多く、思慮深くあるはずなのに、なぜか野球やスポーツの世界になると、目の前の結果に固執してしまう。子どもの成長につながるためには何を大事にすべきかを見失っているように感じます。

 一方でドミニカ人は、経済的には今日食べるのもやっとという人も多い。そういう状況なのに、野球だけは先を見据えた教育をしています。我々大人はこの違いをみて、考え直すべきことがあるんじゃないかなと思います。

 先を見据えた指導が日本でもできるようになったら、もしかしたら、大きな舞台で活躍する選手を今よりも多く送り出すことに繋がるんじゃないかと思います」

 同セミナーはゲストスピーカーの講演の後、必ずワークショップを開催している。

 参加者でグループを組み、ディスカッションをする。テーマを設定して、それぞれがどういう考えかを語り合い、コーチングの形を模索していくのだ。

スポーツ指導の新しい形を探す人たち。

 この日のテーマは「選手と指導者 理想の関わり方」。まさに日大アメフト問題で噴出した、コーチングのあり方を再検討するテーマだった。

 同セミナーに参加して5度目になるという、スポーツ教室のコーチを務める20代後半の男性は、この日の感想をこう話している。

「スポーツの種目ごとの考え方も大事ですけど、スポーツ界としてどういう問いがあるかというのを話し合えて、新たな気づきがありました。今日の話では、指導者は選手をリスペクトする気持ちを持っていないといけないという阪長さんの話が刺さりました。

 こうやって学びの場があるのはありがたいですね。自分を変えられないと、他人はもっと変えられないと思うので、学びを続けることで指導力を高められたらと思います」

 スポーツ育成に軸足を置いて取材をしていると、旧態依然としたスポーツ指導を抜け出して新しいものを生み出そうとする人物が増えてきていると感じる。その1人が阪長氏であり、この回を主催した「スポーツコーチング・イニシアチブ」の面々である。

【次ページ】 スポーツは何のためか、という根本問題。

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