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日本にはスポーツの教え方がない?
大学生が作った「指導法の勉強会」。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byGetty Images
posted2018/06/14 07:30
イチローの同僚として日本でも有名なロビンソン・カノも、ドミニカが生んだスーパースターの1人だ。
人口1000万人でメジャーに151人を送り出す国。
今回は、初めて野球の関係者が講師として登場した。ゲストスピーカーを務めた阪長友仁氏は「目先の勝利にこだわらないコーチング」と題して、メジャーリーガーを多く輩出するドミニカ共和国のコーチング事例を紹介した。
阪長氏は、DeNAの筒香嘉智がスーパーバイザーを務める堺ビッグボーイズの運営母体・NPO法人BBフューチャーのメンバーでもある。小中学生の指導はもちろん、ドミニカを何度も訪れ、現地でジュニア育成のシステムを研究。ドミニカと日本の育成環境の違いから野球界の目指す方向性を模索している。
2015年に筒香がドミニカのウインターリーグに参加した際に、通訳兼コーディネータを務めた人物でもある。
いまでは全国津々浦々へ講演に回り、「なぜ、ドミニカのような人口約1000万人の小さい国から151人ものメジャーリーガーが輩出され、人口1億2千万人の日本人メジャーリーガーが昨年8人しかいないのか(2017年度)」と、ジュニア育成にフィーチャーした活動を続けている。
野球は勝ったり負けたりする競技。
この日阪長氏は、日本のジュニア育成環境をドミニカと比較して問題点を指摘した。
「スポーツが価値あるものになるためにどうしたらいいか。野球をする子がだんだん減ってきているなかで、(環境面の)マイナス要素が大きいと感じています。プロ野球では4勝3敗の勝率で優勝争いができる。勝ったり負けたりするのが野球というスポーツなのに、日本の高校野球はトーナメント制なので、全ての試合で勝利を目指さないといけない環境になっている」
甲子園ではエースが連投することはザラにあるが、ドミニカでは高校生の大会は年間約70試合のリーグ戦で行われ、ピッチャーはローテーションで、球数は最大80球までと決まっているそうだ。
「日本では甲子園で同じ投手が何試合も投げて、その先の舞台で(ケガなどで)伸び悩んだとしても責任問題にはならないですが、ドミニカでは高校生くらいの選手を潰してしまったら、指導者の能力が疑われる。将来的にも活躍する選手を出すために経験を積ませようと考えて指導している」と阪長氏はいう。
この違いの根底にあるのは、野球を取り巻いている指導者、つまり大人の意識だ。