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ロシア連邦総領事館員が教える、
W杯を迎える現地の本当のところ。
posted2018/06/11 07:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Chigirev Anton
日本にとって、最も地理的に近いにもかかわらず、最も馴染みがないヨーロッパの国、それはロシアだ。今回、ロシアでW杯が開催されると聞いても、ピンとこない人が多いのではないだろうか。
だが逆に言えば、今回のW杯は「近くて遠い隣国」を知る絶好の機会である。
「すでにモスクワは公式グッズで溢れ、いたるところに大会のポスターが貼られており、W杯の熱が高まっていますよ」
こう語るのは在新潟ロシア連邦総領事館で働く、アントン・チギリョフだ。
父親も元外交官で、アントンは1歳から6歳までロシア大使館がある六本木に住んでいた。そのときに名古屋グランパスのファンになり、東海大学へ留学したときにはJリーグの試合に通い詰めた。現在もJリーグ観戦を趣味にする。
趣味がこうじて、両国のサッカー人をつなぐ橋渡し役にもなっている。昨年、ロシアで開催されたコンフェデレーションズカップでは、「ちょんまげ隊長」として知られる日本代表サポーター、ツンさんこと角田寛和氏と知り合った。
ツンさんは福島県南相馬市の中学生をW杯へ招待する活動を行っており、在新潟ロシア連邦総領事館と在日ロシア連邦大使館もそれに賛同。ロシア側で中学生を受け入れるホストファミリー探しに力を貸した。
アントンは南相馬を訪れてロシアについて講演。両国に思い入れがあり、ロシアW杯を日本にレクチャーするうえでうってつけの人物だろう。
ロシアは西欧よりむしろ安全?
現在、ヨーロッパ各国でテロが起こり、旅行者にとって懸念点のひとつになっている。ロシアW杯では安全面は大丈夫だろうか? そう聞くと、アントンは「その点では西欧より安全だと思います」と即答した。
「ロシアは他の欧州のどの国よりも早く、組織的なテロの問題に直面してきました。それゆえに治安当局は、テロ対策を進めてきた。たとえば鉄道、地下鉄、ホテルでは手荷物のX線検査を行っている。また、プーチン大統領は、W杯期間中の安全対策強化に関する大統領指令に署名しました」