プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランドの問題児スターリング。
厚顔の10番がタトゥーに込めた想い。
posted2018/06/10 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
面の皮が厚い男。
いかなる時も結果を求められるトップレベルの選手にとっては、一概に悪い評判ではない。プレッシャーを背負って立つ場所が、W杯という世界の檜舞台であればなおさらだ。一世代前のイングランドでは、不倫疑惑や人種差別発言騒動の渦中でも平然とプレーしたジョン・テリーが、呆れるほど心臓の強い男の代表格だった。
開幕まで1週間を切ったロシアW杯に臨む今夏のイングランド代表では、次世代の1人であるラヒーム・スターリングが、テリーから「厚顔」のバトンを受け継いだ感がある。
周囲の好き嫌いが極端に分かれる点は、先代譲り。当人は、プレミアリーグで名を成したリバプール時代から、「一目見ただけで他人に嫌悪感を与える顔なんだ」と開き直ってさえいた。
右足に自動小銃のタトゥーを入れた理由。
W杯前の強化合宿で物議を醸した“ある出来事”に関しても、スターリングは「大して気にならない」と、6月5日に代表のトレーニングセンターであるセント・ジョージズ・パークでのメディアデーで語っている。
ある出来事とは、右足に入れたM16自動小銃の最新タトゥーが「子供たちの見本となるべきプロ選手でありながら非常識すぎる」と非難された件だ。英国内でも増える傾向にある銃犯罪の撲滅を目指す団体などからは、「タトゥーを除去しないのならW杯代表から除外されるべき」との声も上がった。
さらに、他の選手たちよりも1日遅い合流を認められていたが、生まれ故郷ジャマイカでのバカンスから更に半日遅れで合流。この規則違反は、代表番記者陣の間ではタトゥー以上に問題視された。高級紙『ガーディアン』では、学生時代のスターリングに「素行を改めないと、17歳になる頃には代表入りか刑務所入りのどちらかだぞ」と告げたという教師の言葉が、前回大会に続いてW杯代表に選ばれた問題児の背景として社会面に掲載されていた。