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ラグビーW杯、東京五輪、そして医師。
福岡堅樹が描く文武両道の人生設計。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2018/06/11 17:00
50m5秒7の豪脚をうならせて疾走した福岡堅樹。テストマッチ通算17本目のトライとなった。
歴代ウイングでも抜きんでた守備力。
そして、福岡を歴代の名ウイングの中でも特別な存在にしている要素がディフェンスだ。 前半、試合の行方がまだ定まらなかった時間帯には、日本ゴールに迫った相手に後方から追いついて相手のトライを阻止する「トライセービング・タックル」を連発した。
現在の日本代表は、ディフェンスライン全体が激しく前に出て相手にプレッシャーをかけ、ミスを誘う作戦を採用している。前で相手を倒し、ボールを奪えばビッグチャンスを生む可能性がある半面、入れ違って相手にラインブレイクされるリスクもはらむ。
そのリスクを減らすのが福岡の俊足だ……とはいえ、福岡は非常事態に備えて待機しているわけではない。最前線で前に出ながら、裏に出られたらそこに追いつくという、二重の責務を課されている。
そして本当にすごいのが、それを高いレベルで両立させているところだ。福岡は全力で前にプレスしながら、裏に出られれば全力で戻り、追いついて倒す。チーム最速のフィニッシャーとしてトライハンターの役目を果たしながら、ディフェンスでもフルタイムの働きをこなしている。
高強度のランニングを繰り返すタフさ。
日本代表の選手は練習でも試合でも、GPS装置を背中に装着し、ピッチ上の移動距離、移動スピードなどを測定している。詳細な数値は公開されていないが、福岡は「ハイスピード、ハイインテンシティ(高強度)のランメーターは、移動全体の20%台まで行きます。学生のころはすごい低かったですよ。7%とかでした」と笑って話す。
高強度のランニングをくり返す。それは、ゆっくりとジョグしながら戦況を観察するのではなく、戦況を変えるために必要なプレー、意味のあるプレーをくり返している証だ。それが、試合中のプレー回数の多さ、言い換えるとワークレートの高さに繋がっている。
「昔は自分の強みがワークレートと言われるなんて、思いもしませんでした。以前は1本走ったらしばらく走れなくなってましたからね。そこは、セブンズをやったことで鍛えられたところだと思います」
オリンピック種目として採用されている7人制では、15人制と同じ広さのフィールドを半分に満たない7人で攻め、守らなければならない。1人あたりの走る距離も長ければ、休む暇は片時もない。様子見は許されない。そんな鍛錬の積み重ねが、現在のフルタイム・ランナー福岡堅樹を作った。