ラグビーPRESSBACK NUMBER
頸髄損傷を乗り越え皆で富士山頂へ。
慶大ラグビー部員たちの固い絆。
posted2018/06/08 10:30
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph by
Masataka Tara
2007年夏、慶應義塾大学ラグビー部の1年生だった杉田秀之さんは、夏合宿の練習試合で頸髄を損傷。生涯歩くことはできないと診断された。部員の非常事態に、合宿最後に予定されていた富士登山は急遽中止となった。
それから約11年の月日が流れ、いま杉田さんは大きな目標に向かってトレーニングを積んでいる。
あのとき中止となり実現しなかった富士登山に、2019年夏、当時の仲間と共にチャレンジをするのだ。
2007年8月26日、長野・菅平高原でのことだった。
杉田さんはラグビーの練習試合にプロップとして出場し、スクラムが崩れた際に第5、第6頸椎間で頸髄を損傷。ドクターヘリで下山し、長野市内で手術を受けた。
手術翌日、杉田さんが詫びた3つのこと。
当時就任1年目だった林雅人監督は、手術翌日の杉田さんとのやりとりを鮮明に覚えている。
林監督はこの時すでに「最高に回復して車椅子、基本的には寝たきり」という診断を伝え聞いていた。
「集中治療室に入ると、彼は真上を見ることしかできない状態でした。首が回らないので、彼に見えるように顔を出しました。そのとき彼は3つのことを言っていて」
1つ目は、試合を途中で退場してすいませんでした。
2つ目は、試合はどうなりましたか。
「生涯寝たきりになるかもしれない男が、試合について詫びて、試合の結果について聞いてきたんです」
そして3つ目が、富士登山に行けなくて申し訳ありません、だった。