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ラグビーW杯、東京五輪、そして医師。
福岡堅樹が描く文武両道の人生設計。
posted2018/06/11 17:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Nobuhiko Otomo
いまこの男を生で見ていられるのは、本当に幸せなことだ――背番号11の躍動を見て、そう思った。
福岡堅樹。日本代表のウイングである。だがその働きは、従来のウイング像を大きく超越している。6月9日、日本代表が会心の勝利を飾ったイタリア戦で、福岡はその能力を遺憾なく発揮した。
強烈な光を放ったのは前半28分だ。自陣10m線手前左隅で、CTBラファエレ ティモシーからパスを受けたとき、左側のスペースは5mもなかった。だがその狭いスペースを攻略。福岡は後ろから飛び込むイタリアのFLリカータ、No8ステインを蹴散らし、1対1で向き合った相手FBミノッツィを抜き去り、65mを独走する圧巻のトライを挙げたのだ。
福岡のトレードマークは深い前傾姿勢を保った重心の低いランニングだ。だがこのとき、ボールを持った福岡は一瞬、姿勢を立てた。1対1で向き合ったイタリア期待の若手FBは迷った。
「あのとき、相手は内側を気にしている素振りが見えたので、思い切って外に勝負しました」
スクラムではSHの位置に入ることも。
自分がトライを決めるだけではない。その10分前には、No8アマナキ・レレイ・マフィからリーチ マイケルとつないだパスを大外で前に運び、タックルを受けながらボールを内に返し、再びリーチ経由でマフィのトライにつなげた。
働き場所は、従来のウイングの枠にとどまらない。後半はサンウルブズでも時折見せる、スクラムでスクラムハーフの位置に入っての直接サイドアタックで大きくゲイン、FB松島幸太朗のトライをセットアップした。
「サンウルブズでもやっていますからね。考えたのは、たぶんブラウニー(トニー・ブラウンコーチ)だと思います。期待してもらえるのは嬉しいことですし、その分責任も出てきますから、しっかりやらなきゃと思っています」
かと思えば、次にSHの位置に入ったときは、マークする相手ディフェンスの裏をかき、オーソドックスにパスでアタックを継続した。
「まあ、昔、スクラムハーフもやってましたんで(笑)」