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なぜ、球団は育てた選手を手放すか。
その裏にある痛みと愛情と哲学とは。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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posted2018/05/25 11:00

なぜ、球団は育てた選手を手放すか。その裏にある痛みと愛情と哲学とは。<Number Web> photograph by Kyodo News

大谷翔平、ダルビッシュ有……彼らが抜けても力を保っているのが日本ハムの底力だ。

世代交代については「否」が多数。

 激しい新陳代謝を繰り返しながら世代交代を図ってきた。熱心なファン、野球通の方々から賛否両論の意見を頂戴するが、こちらに届く声は「否」が圧倒的多数である。

 例を挙げる。「なぜ来季の契約をしないのか」、「どうしてライバル球団へトレードするのか」、「お金を捻出してでもFA選手を引き留めるべき」などなど、である。知人との居酒屋トークでも、よくその姿勢を糾弾される。

 仮に先に列挙した選手たちが、現在も在籍していたらレギュラーを張っていた可能性がある。現在も現役で活躍しているのであるから、当然だろう。

 その場合、今シーズンのファイターズのレギュラーは出場機会を失っていることになる。芽を伸ばしてきた若手が奮闘しているが、それが実現しないのである。

 どちらがベストチームなのか……。その答えは、もちろん分からない。ただ、多くのファイターズ出身選手が、日米でいまだ活躍、出場機会を得ていることに、1つの答えがあると思うのである。

移籍事情の裏には深い「情」が宿る。

 ここからは球団広報が論ずるべきではないと断っておくが、身びいきと思われても伝えたいことがある。

 ファイターズのチーム強化の理念の軸に「スカウティング」と「育成」の2つがある。選手として個性が豊かで、魅力あふれる逸材をドラフトで指名している。将来展望も見据え、また直近のチーム状況も鑑み、多彩な才能を組み合わせていく。シンクロさせ、強化を狙っていくのである。その裏には、去る選手がいるのも常なのだ。

 弊チームの移籍事情をドライでシビアと捉える向きもあることを認識しているが、裏には深い「情」が宿っていることは力説したい。ファイターズが北海道に誕生する以前から、アマチュア獲得の陣頭指揮を執っているのは山田正雄スカウト顧問。ゼネラルマネジャーを務めたこともある、熟練の目利きである。

 ある選手の交換トレードが成立した際、こんな胸の内を聞いたことがある。

【次ページ】 「他のチームでも活躍してくれた方が」

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