ROAD TO THE DERBY 2018BACK NUMBER
マイルを制するものは2400を制す。
名手武豊とジャンダルムが栄光を掴む。
posted2018/05/23 07:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Keiji Ishikawa
「将来的にはブリーダーズCマイルを目指したい馬」
調教師の池江泰寿がそう語るのはジャンダルムだ。
父はKitten's Joy、母は名スプリンターとして知られたビリーヴだ。
父はアメリカでの現役競走馬時代、芝2000mのGIを2勝。2400mのブリーダーズCターフは2着だった。くわえてこの母ということもあり、血統的にはたしかにダービーの舞台となる2400mは少々長く思える。池江は言う。
「体形や気性的なことを考えても本質的にはマイラーだと思っています」
だから昨年9月のデビュー戦も1600m戦を使った。武豊を背にしたジャンダルムは結果、このレースを勝利するのだが、目にとまったのはその競馬ぶり。好位で控えると、勝負どころではいつでも先行勢を捉まえられるといった手応えだった鞍下に対し、鞍上は我慢に我慢を重ねた後、追い出した。
「ジョッキーが距離をもつように教えつつ、結果も出してくれました」
その手綱捌きを指揮官はそう評した。
「まずはダービーを目指すのは当然」
続くデイリー杯2歳Sはまたもマイル戦ということもあり、鋭く伸びて連勝した。当時の2着が後にニュージーランドトロフィーを制すカツジであり、3着はGⅠのNHKマイルCを優勝するケイアイノーテックだったのだから、やはり1600mでのジャンダルムの能力の高さは折り紙付きと言って良いのではないだろうか……。
しかし、続く一戦で、池江は2000mのホープフルSに矛先を向けた。
「どうしても距離に不安のある馬ならともかく、そうでない限り、まずはダービーへ行ける路線を目指すのは当然です」
これは何も池江の独りよがりでないことは、先に記した新馬戦における武豊の騎乗ぶりからも分かる。そして、その考えに誤りがないことを、証明したのはジャンダルム自身であった。