燕番記者の取材メモBACK NUMBER
隙を逃さないヤクルトの「走塁変革」。
旗手は広島から来た河田雄祐コーチ。
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph byKyodo News
posted2018/05/20 07:00
5月9日に好走塁を見せた西浦。開幕スタメンではなかったが、少ないチャンスを生かして遊撃のレギュラーを獲得している。
走塁改革の旗手は広島からやって来た。
今季のヤクルトが掲げる「変革」の1つが走塁面にある。
昨季の得点はセ・リーグ2連覇した広島の736を大幅に下回る、リーグワーストの473。打力は短期間で、そう簡単には上がらない。着目した1つの数字が、広島の112個の半分にも満たない50個の盗塁数を含めた「走塁」だった。
今季から指揮官に復帰した小川淳司監督は「無安打でも得点できる野球」の重要性を認識し、走塁面を強化ポイントに掲げた。
走塁改革の旗手は、広島から加入した河田コーチだ。
セ・リーグ王者の三塁コーチを務めたスペシャリストは、春季キャンプでヤクルトナインの動きを見て「カープの方が平均的に足が速いかな。いきなり腕を回せない(二塁から一気に本塁へ生還させられない)と思う。二塁走者を本塁付近まで引っ張って(本塁に行かせるか)判断するのが増えそうかな」と感じていた。だからこそ、まずは基本技術の徹底から着手。
「真っすぐ走る」「ベースを蹴る時は鋭角に入る。内側に体を倒す」など、走塁のイロハの「イ」から、あらためて丁寧に体と頭の中に染み込ませていった。
19歳の捕手・古賀優大の激走!
俊足ではなくても、意識次第で走塁は変わる。冒頭のシーンの前にも、シーズン中に走塁改革の浸透ぶりを象徴する場面があった。
5月6日の広島戦(神宮)の延長11回2死一塁、坂口智隆がサヨナラ二塁打を決めた。見逃せないのは、一塁から一気に本塁生還を果たしたのが、決して俊足とはいえないプロ2年目捕手、19歳の古賀優大だったということだった。
フルカウントでスタートを切っていたとはいえ、一岡竜司投手が足を上げるかどうかという、かなり際どいタイミングで抜群のスタートを切った。打球が右翼線へ飛ぶと、古賀は懸命に足を回転させ、一気に三塁を回って本塁へ滑り込んだ。その直後、捕手・会沢翼のミットに返球がおさまった。もし古賀のスタートが少しでも遅れていれば、広島の隙のない中継プレーにサヨナラを阻止されていた可能性はあっただろう。