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バルサの指導者研修に日本人が参加!
楽天の仲介で実現した史上初の事件。
posted2018/05/15 11:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
VISSEL KOBE
FCバルセロナには、同クラブのアカデミーで働く指導者たちに向けた“新人研修”がある。「マシア」と呼ばれる寮の1階に40人を集め、朝10時から夕方5時まで、約2週間にわたって講義と実践が行われるのだ。
バルサの歴史や哲学から始まり、サッカーの考え方、練習法、タレント発掘法、データ管理法、マネジメント法などが叩き込まれる。撮影、録音は一切禁止。バルサとしての企業秘密が凝縮された“虎の穴”だ。
そのコーチング研修に、今年2月、2人の部外者が参加することが認められた。ヴィッセル神戸の新スタッフ、45歳の林健太郎と43歳の平野孝である。
平野はこう振り返る。
「バルサでアテンドしてくれた担当者から、研修プログラムを部外者に受けさせるのは初めてのことだと言われました。楽天だから協力するんだと」
2016年11月、楽天がバルセロナのメイングローバルパートナーになったことで、同社傘下のヴィッセルもバルサとの関係が深まった。そして楽天の橋渡しにより、バルサのコーチング研修に参加することが認められた。
三浦SDが指名した2人の元チームメイト。
クラブ内で誰を派遣するべきかが議論されると、三浦淳寛スポーツダイレクター(SD)は林と平野を推薦した。3人は元ヴィッセルの選手であり、東京ヴェルディ時代の元チームメイトでもある。
そもそも林と平野がヴィッセルに加わることになったのは、今年1月、三浦がSDに就任したのがきっかけだ。
7年間アマチュアの指導現場で経験を積んでいた林と、選手会(日本プロサッカー選手会)で執行役員として活躍していた平野に、三浦が「一緒にヴィッセルに来てくれ」と声をかけたのだ。2人は元チームメイトの思いに応え、新たな挑戦を決意した。
今年2月、林と平野がバルセロナへ飛び、研修がスタートした。すべての講義はカタラン語で行われる。2人は通訳が話すことを必死にメモに書き留めた。
「講師が通訳を待ってくれるわけではないので、メモが大変。汚い字でいいから書き続けた。それでも間に合わないから、とにかく頭に詰め込んで、アパートに帰ってからパソコンに打つ。本当に貴重な体験でした」(林)