太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
五輪金メダルは最上位目標ではない!?
「突け、心を」を説くフェンシング協会。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph bySports Graphic Number
posted2018/05/07 07:00
協会のスローガンである「突け、心を」のポストカード。裏にはJALのNEXT ATHLETE MILE制度の案内も。
「五輪金メダル」を最上位目標に掲げない。
最上位概念について、私達はアマチュア競技団体としては大きく舵を切る決断をしました。
それは「オリンピックで金メダルをとること」を最上位に掲げない、ということ。
もちろん強化部門にとってはそれが最上位の概念となりますし、もし僕がコーチや監督をやっていたら、「金メダルに直結しないことはやるな」と言いますが、協会としては、「フェンシングを通じて感動体験を提供すること」を最上位に置くことに決めたのです。
これからは、この最上位概念の実現のために、我々1人ひとりの行動や姿勢が問われることになります。
対外的には、昨年の全日本選手権向けに作ったビジュアルイメージを流用しつつ、「突け、心を」というスローガンを打ち出していくことになりました。コピーライターの小藥元(こぐすり・げん)さんが、大変熱心にフェンシングを勉強してくださって、やりとりを重ねていく中で、こんなフレーズが添えられています。
マスクをかぶる。顔は見えない。けれど、汗は見える。感動は見える。
人間と人間、剣と剣しかない。あなたははじめての感情を知るかもしれない。
ピストの上、緊迫の中、真剣勝負。ALLEZ! はじめ!
「感動は見える」「汗は見える」
いかがでしょうか。フェンシングという競技は、マスクをかぶるため、他競技と比べて選手の表情が見えにくいという「ハンデ」があります。でも、そんなネガティブな要素を小藥さんは「感動は見える」「汗は見える」といった形でポジティブなかたちに転化してくれたのです。
この「突け、心を」ポスターは、すでに5000枚ほど刷り、全国の学校やフェンシングクラブに配布しました。今、追加で1000枚刷り増ししています。4月、中学1年生や高校1年生が何かを始めるタイミングで彼らの目に触れることで、フェンシングもその選択肢の1つとなっていければ、と考えています。
この4月、TBS系列の「炎の体育会TV」やフジテレビ系列の「ジャンクSPORTS」といった、アスリートが出演するスポーツバラエティー番組に、現役トップの日本人フェンサーが集中して出演したのも、この時期がチャンスと考えてのもの。
特に高校生はすべてが夏のインターハイベースで進んでいきますから、4月に始めてもらうのが一番ですから。